裁判官の判断ミスで国家賠償請求できる?裁判官の職務行為が違法となる条件を解説

裁判官の判断ミスだけでは、国家賠償請求は原則として認められない

裁判官が事実を誤認した、法律の解釈を誤った、証拠を十分に評価しなかった――このような事情があっても、それだけで国に損害賠償を請求できるわけではありません。

判決の誤りは、通常、控訴や上告などの訴訟上の救済方法によって是正されるべき問題です。上級審で判決が取り消されたとしても、直ちに国家賠償法上の「違法」と評価されるわけではありません。

裁判官の職務行為について国家賠償が認められるには、裁判官が違法または不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認められる特別の事情が必要です。

国家賠償法1条で裁判官の職務行為が違法となるための基本条件

国家賠償法1条1項の要件

裁判官の職務行為について国に賠償を求める場合も、基本的には国家賠償法1条1項の要件を満たさなければなりません。具体的には、次の事情が必要です。

  • 裁判官が公権力の行使に当たる公務員であること
  • 職務を行うについて行為をしたこと
  • 故意または過失があること
  • 行為が違法であること
  • 他人に損害が発生したこと

この場合、原則として賠償責任を負うのは裁判官個人ではなく、国です。

「故意・過失」と「違法」は別の要件

「故意または過失」は、公務員の主観的要件です。一方、「違法」は、職務行為が法規範に反しているかという客観的要件です。

したがって、判断に誤りがあったとしても、それが上訴などの訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵にとどまる場合、国家賠償法上の違法とは限りません。

裁判官の裁判が国家賠償法上「違法」と評価される条件

上訴で是正されるべき誤りだけでは足りない

最高裁判所昭和57年3月12日判決は、裁判に上訴などで是正されるべき瑕疵があっても、それだけで国の賠償責任が生じるわけではないと判断しています。

国家賠償が認められる「特別の事情」

国家賠償が認められるためには、裁判官が違法または不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認められる特別の事情が必要です。

単に判決の結論が不当だったというだけでなく、裁判官の権限行使について、このような特別の事情があることが必要です。

上訴などの救済手段との違い

判決の取消しや変更を求める手続と、国に損害賠償を求める手続は目的が異なります。判決の瑕疵を是正するには、控訴・上告などの訴訟法上の救済方法が問題となります。

したがって、上級審で判決が取り消された事実だけを根拠に、国家賠償を請求することはできません。

まとめ|裁判官の判断ミスで国に賠償請求できるのは例外的な場合

裁判官の判断に誤りがあっただけでは、原則として国家賠償請求は認められません。国家賠償法1条1項の要件に加え、違法・不当な目的で裁判をしたなど、裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認められる特別の事情が必要です。

判断の誤りを正す問題と、国に損害賠償を求める問題は別です。検討では、誤判の有無だけでなく、国家賠償法上の違法性を示す特別の事情があるかが重要になります。