政府の経済政策によって物価が上昇したり、保有する郵便貯金の価値が目減りしたりした場合、「政策を誤った政府に国家賠償を請求できないのか」と考えることがあるでしょう。
結論として、経済政策の結果が悪く、損害が発生したというだけでは、原則として国家賠償請求は認められません。ただし、政策に関連する個別の行政行為について、国家賠償法上の要件を満たす違法行為があれば、国家賠償が問題になる可能性があります。
経済政策の失敗だけでは国家賠償請求は難しい
経済政策について、その時々の内外の情勢のもとで具体的にどのような措置をとるかは、政府の裁量的な政策判断に委ねられています。
裁判所も、政府が経済政策の判断を誤ったり、実施した措置が適切でなかったりした結果、政策目標を達成できず、またはこれに反する結果を招いたとしても、それだけで国家賠償法上の法律上の義務違反や違法行為になるわけではないと判断しています。
政治的責任と賠償責任は別
政策の結果が不適切であれば、政府の政治的責任が問われることはあります。しかし、政治的責任を問われることと、法律上、損害を賠償する義務を負うことは別の問題です。
政策に関連する個別の行政行為に違法性があれば請求できる可能性がある
国家賠償法1条1項に基づく請求では、主に次の事情が必要です。
- 国または公共団体の公権力の行使であること
- 公務員が職務を行うについて行った行為であること
- 公務員に故意または過失があること
- 行為が違法であること
- その行為によって損害が生じたこと
例えば、税務署長が所得税の更正を行い、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことだけで直ちに国家賠償法上違法となるわけではありません。資料を収集し、課税要件事実を認定・判断する際に、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と更正したと認められる事情がある場合に、違法と評価される可能性があります。
つまり、政策の当否ではなく、個別の行政行為について違法性や職務上の注意義務違反があったかが判断されます。
請求先は原則として国または公共団体
国家賠償法1条1項による場合、損害賠償責任を負うのは国または公共団体です。実際に職務を行った公務員個人が、国家賠償法に基づいて直接責任を負うものではありません。
まとめ
- 政府の経済政策が失敗したというだけでは、原則として国家賠償請求はできない
- 経済政策の決定は、政府の裁量的な政策判断に委ねられている
- 政治的責任と、法律上の損害賠償責任は区別される
- 政策に関連する個別の行政行為に違法性や注意義務違反があれば、国家賠償が問題になる可能性がある
