犯罪被害者や告訴人は、捜査の不備を理由に国家賠償請求できる?
国家賠償請求はできない
犯罪被害者や告訴人は、捜査機関による捜査が適正を欠くことや、検察官が不起訴処分にしたことを理由として、国家賠償請求をすることはできません。
犯罪捜査や検察官による公訴権の行使は、犯罪被害者の損害を回復するためではなく、国家・社会の秩序を維持するという公益のために行われるものだからです。
また、告訴は、捜査機関に犯罪捜査の端緒を与え、検察官の職権発動を促すものにすぎません。捜査や公訴提起によって被害者・告訴人が受ける利益は、公益目的の活動から反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではないとされています。
不起訴処分の違法を理由とする請求もできない
不起訴処分に納得できないことと、その処分について国に損害賠償を求められることは別問題です。捜査が適正を欠くことや、不起訴処分が違法であることを理由としても、被害者または告訴人は、国家賠償法に基づく損害賠償請求をすることはできません。
国家賠償法1条の基本的な要件
国家賠償法1条1項は、国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人へ損害を加えたとき、国または公共団体が賠償責任を負うと定めています。
もっとも、犯罪の被害者や告訴人が、捜査の不適正または不起訴処分の違法を理由として国家賠償請求をする場合、捜査や公訴提起によって受ける利益は法律上保護された利益ではないとされています。
判例は捜査の不備・不起訴処分についてどう判断したのか
最高裁判所平成2年2月20日判決
最高裁判所は、犯罪捜査と検察官による公訴権の行使は、国家・社会の秩序維持を目的とし、犯罪被害者の被侵害利益や損害の回復を目的とするものではないと判断しました。
そのため、被害者または告訴人は、捜査機関による捜査が適正を欠くことや、検察官の不起訴処分が違法であることを理由として、国家賠償法に基づく損害賠償請求をすることはできないとしています。
まとめ
犯罪被害者や告訴人は、捜査の不備や不起訴処分を理由として、国家賠償請求をすることはできません。捜査・公訴提起は、被害者個人の損害回復ではなく、国家・社会の秩序維持のために行われるものであり、被害者や告訴人が受ける利益は法律上保護された利益ではないためです。
