憲法の最高法規性とは?百里基地訴訟と条約との関係を解説

憲法98条1項は、憲法を「国の最高法規」と定めています。これは、憲法が国の法形式の中で最も強い効力を持ち、憲法に反する法律や命令などは、違反する範囲で効力を持たないという意味です。国家権力から国民の人権を守るため、憲法を国の法形式の中で最も上位に置く仕組みといえます。

憲法の最高法規性とは

憲法98条1項が定める内容

憲法98条1項は、憲法に反する法律、命令、詔勅および国務に関するその他の行為の全部または一部について、効力を認めないとしています。

ここでいう「国務に関するその他の行為」は、国が行うすべての活動を指すわけではありません。法律や命令と同じように、国が公権力を使って法規範、つまり国民や機関を拘束するルールを定める行為が対象となります。行政処分や裁判も、個別の事件に関するものであっても、法規範を定立する限り含まれます。

百里基地訴訟で示された最高法規性の範囲

百里基地訴訟の事案

百里基地訴訟では、自衛隊基地の建設用地を取得するために国が締結した土地の売買契約が問題となりました。この契約が、憲法98条1項の「国務に関するその他の行為」に当たるかが争われたものです。

最高裁判所の判断

最高裁判所は、国が行った行為であっても、私人と対等な立場で行う私法上の契約は、法規範を定めるものではないと判断しました。そのため、土地売買契約は「国務に関するその他の行為」には当たらないとされました。

この判例から、最高法規性の対象は国の行為全般ではなく、公権力を行使して法規範を定立する行為に限られることが分かります。国が私人と同じ立場で締結する契約は、原則としてこの対象には含まれません。

憲法と条約はどちらが優位か

条約優位説と憲法優位説

憲法98条1項には、法律や命令などは列挙されていますが、「条約」は明記されていません。そこで、条約は憲法より上位にあると考える条約優位説があります。

これに対し、条約の締結には内閣の締結と国会の承認が必要であるのに対し、憲法改正には、各議院の厳格な発議要件に加えて国民投票が必要です。このような手続の違いから、条約が憲法に優位することはできないとする憲法優位説があります。

判例・通説の考え方

判例である砂川事件判決と通説は、憲法優位説を採用しています。したがって、日本では、98条1項に条約が明記されていないことだけを理由に、条約が憲法より優先するとは考えられていません。

まとめ

  • 憲法の最高法規性とは、憲法が国の法形式の中で最も強い効力を持つことです。
  • 百里基地訴訟では、対象となるのは公権力によって法規範を定立する国の行為だと示されました。
  • 国が私人と対等な立場で行う私法上の契約は、原則として対象外です。
  • 条約については、判例・通説が憲法優位説を採用しています。