占有権は、所有権があるかどうかにかかわらず、物を事実上支配している状態を保護する権利です。民法180条は、自己のためにする意思をもって物を占有することで占有権を取得すると定めています。
このため、占有権が消滅するかどうかは、所有権を失ったかではなく、占有の意思や物の所持を失ったかによって判断されます。
占有権が消滅する2つの場合
民法203条本文では、次のいずれかに該当すると、原則として占有権が消滅するとされています。
- 占有の意思を放棄した場合
- 占有物の所持を失った場合
2つは別々の消滅原因であり、どちらか一方だけでも占有権は消滅します。
占有の意思を失った場合とは?
占有の意思とは、自己のために物を支配する意思をいいます。占有者がこの意思を放棄した場合、占有権は消滅します。
もっとも、単に物を使っていないだけでは、直ちに占有の意思を失ったことにはなりません。占有を続ける意思がある場合は、占有の放棄とは区別されます。
占有物の所持を失った場合とは?
所持を失い、物の事実上の支配を失った場合には、原則として占有権が消滅します。これは、その物の所有権を持っているかどうかとは別の問題です。
占有回収の訴えとの関係
占有を奪われた場合、占有者は民法200条の占有回収の訴えによって、その物の返還や損害賠償を求めることができます。この訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければなりません(民法201条3項)。
ただし、占有回収の訴えは、占有物を窃取・強盗された場合など、占有を奪われた場合に限り提起できます。詐欺の相手方や、賃借物の返還を拒んでいる賃借人に対しては、占有回収の訴えを提起することができません。
占有回収の訴えを提起した場合の例外
民法203条ただし書は、占有回収の訴えを提起した場合について、その訴えに関する占有を失わなかったものとみなす扱いを定めています。
したがって、「所持を失えば占有権が消滅する」というのが原則ですが、占有回収の訴えとの関係では、占有が継続していたものとして扱われることがあります。
まとめ
占有権は、民法203条により、次のいずれかで原則として消滅します。
- 物を自己のために支配する意思を放棄した場合
- 物の所持を失った場合
ただし、占有回収の訴えを提起した場合には、民法203条ただし書による例外的な扱いがあります。占有権の消滅は、所有権の消滅とは別に判断される点にも注意しましょう。
