不可分債務とは、複数の債務者が、性質上分けられない給付を負担する債務です。債権者は、債務者の1人に対して全部の履行を請求できます。この点は連帯債務と共通しますが、不可分債務は給付そのものが分割できないことによって成立する点が大きく異なります。
不可分債務とは
不可分債務の意味
民法430条の不可分債務は、債務の目的がその性質上分割できない場合に、複数の債務者が負う債務です。
たとえば、共同賃借人による賃借不動産の返還債務は、その性質上、不可分債務とされます。また、賃借人が死亡し、共同相続人が不動産賃借権を共同相続した場合の賃料債務も、賃借権の効力が賃借物全部に及ぶことから、不可分債務とされます。
債権者は、不可分債務者の1人に対し、または全員に同時・順次に対し、全部または一部の履行を請求できます。
不可分債務と分割債務の違い
給付が分割できる場合、特約がなければ、各債務者が等しい割合で負担する分割債務が原則です。一方、不可分債務は、給付の性質上、分けて履行できません。債務者が複数いるだけで、当然に不可分債務になるわけではありません。
不可分債務の絶対効と相対効
絶対効と相対効の意味
絶対効とは、債務者の1人に生じた事情が、他の債務者にも及ぶことです。これに対し、相対効は、その事情が原則として他の債務者には影響しないことをいいます。
不可分債務で絶対効が生じる事項
不可分債務では、次の3つについて絶対効が生じます(民法430条)。
- 弁済・代物弁済・供託:債務者の1人が債権者に弁済すると、他の債務者の債務も消滅します。
- 相殺:債務者の1人が、債権者に対する反対債権を使って相殺を援用すると、その相殺は他の債務者の利益のためにも効力を生じます。
- 更改:債務者の1人と債権者との間で更改が成立すると、他の債務者にも効力が及びます。
それ以外は原則として相対効
弁済、代物弁済、供託、相殺、更改以外の事情は、原則として相対効です。たとえば、債務者の1人が免除を受けても、他の債務者の債務まで当然に消滅するわけではありません。ただし、債権者と他の不可分債務者の1人との間に別段の合意がある場合は、その合意に従います。
不可分債務と連帯債務の違い
共通点
どちらも、債権者は債務者の1人に全部の履行を請求できます。また、弁済や相殺など一定の事由は、他の債務者にも効力を及ぼします。
主な違い
| 比較項目 | 不可分債務 | 連帯債務 |
|---|---|---|
| 給付の性質 | 性質上、分割できない | 性質上は分割できる |
| 成立の理由 | 給付の不可分性 | 法律の規定または当事者の意思表示 |
| 全部請求 | できる | できる |
| 絶対効 | 弁済・相殺・更改 | 弁済・相殺・更改・混同 |
| 請求・免除 | 原則として相対効 | 原則として相対効 |
つまり、債権の目的が性質上可分であっても、法律の規定や当事者の意思表示によって連帯債務になることがあります。一方、不可分債務は、連帯と定めたかどうかではなく、給付の性質が分割できないことが根拠となります。
