鉄道や航空運賃などの旅客運送取引、水道・ガス・電気などの供給契約では、事業者があらかじめ一定の契約条項を定め、同じような条件で多数の相手方と契約することがあります。このような契約で用いられる条項のまとまりが、民法上の定型約款です。
定型約款とは
約款による契約の意味
約款とは、契約の一方当事者があらかじめ一定の契約条項を定め、それに基づいて相手方と契約する仕組みです。相手方ごとに条件を細かく交渉するのではなく、共通のルールを使う点に特徴があります。
もっとも、民法はすべての約款についてルールを定めているわけではありません。定型取引に用いられる定型約款について、一定のルールを定めています。
定型取引と定型約款の定義
定型取引とは、次の条件を満たす取引です。
- ある特定の者が、不特定多数の者を相手方として行うこと
- 取引内容の全部または一部が画一的であることが、当事者双方にとって合理的であること
たとえば、鉄道や航空運賃などの旅客運送取引、水道・ガス・電気などの供給契約が該当します。
定型約款とは、定型取引において、契約の内容とすることを目的として、特定の者により準備された条項の総体をいいます。したがって、すべての「約款」が民法上の定型約款に当たるわけではありません。
定型約款はどのように契約内容になるのか
定型約款の個別条項にも合意したものとみなされる場合
定型取引を行うことの合意をした者が、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときなどには、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなされます(民法548条の2第1項)。
定型約款の内容を表示してもらう方法
定型約款を準備した者は、定型取引を行い、または行おうとする場合、相手方から請求を受けたときは、原則としてその内容を示さなければなりません。
請求できるのは、定型取引について合意する前、または合意後の相当な期間内です。表示は、遅滞なく、相当な方法で行う必要があります(民法548条の3第1項本文)。
定型約款は契約後に変更できるのか
定型約款を変更できる場合
定型約款準備者は、変更が相手方の一般の利益に適合するときなど、法律上の要件を満たす場合には、相手方一人ひとりと改めて合意しなくても定型約款を変更できます。
この場合、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなされます(民法548条の4第1項)。ただし、事業者が自由に内容を変更できる制度ではありません。
まとめ:定型約款とは、定型取引で使われるあらかじめ定められた契約条項
定型約款とは、不特定多数の相手方に対して画一的な取引を行うことが合理的な定型取引で、契約内容とするために準備された条項のまとまりです。
- 定型約款を契約内容とする旨の合意などがあれば、個別の条項にも合意したものとみなされる
- 相手方は、一定の時期に約款の内容を示すよう請求できる
- 定型約款の変更は、法律上の要件を満たす場合に限り認められる
つまり、「約款である」というだけで、事業者が契約条件を自由に決めたり変更したりできるわけではありません。
