代理人が本人から一定の代理権を与えられていたとしても、その範囲を超えて契約をすることがあります。このような行為が「権限外の行為」です。
原則として、代理人が権限を超えてした行為は無権代理となり、本人には契約の効果が及びません。ただし、相手方に「代理人に権限があると信ずべき正当な理由」がある場合には、民法110条の表見代理が成立し、本人が契約上の責任を負うことがあります。
権限外の行為の表見代理とは
表見代理の基本的な意味
表見代理とは、実際には代理権がない、または代理権の範囲を超えているにもかかわらず、代理権があるように見える事情を信頼した相手方を保護する制度です。
権限外の行為の表見代理では、本人から一定の代理権を与えられていたことが前提になります。この代理権を、表見代理の判断の基礎となる「基本代理権」といいます。
権限外の行為に当たるケース
たとえば、Aから土地賃貸の代理権を授与されたBが、Cに土地を売却した場合です。土地賃貸の代理権の範囲を超えて土地を売却しているため、権限外の行為に当たります。
権限外の行為の表見代理が成立する要件
1.代理人に基本代理権があること
代理人が、本人から何らかの代理権を与えられていなければなりません。その代理権が、権限外の行為をしたように見える外観の基礎になります。
2.基本代理権の範囲を超えていること
実際に与えられていた代理権の対象や範囲を超えた行為である必要があります。基本代理権の範囲内であれば、そもそも民法110条の権限外の行為には当たりません。
3.相手方に「正当な理由」があること
相手方が、代理人にその契約をする権限があると信じ、かつ、そのように信じたことに正当な理由が必要です。正当な理由は、一般に相手方の善意・無過失と同じ意味に解されています。
- 善意:代理人に権限がないことを知らないこと
- 無過失:権限がないことを知らなかった点に落ち度がないこと
したがって、相手方が単に「権限があると思っていた」というだけでは足りません。
正当な理由がある場合の効果
基本代理権、権限外の行為、相手方の正当な理由という要件を満たすと、表見代理が成立します。この場合、代理人がした無権代理行為の効果は本人に帰属し、本人と相手方との間に契約が成立したことになります。
その結果、本人は相手方に対して履行責任を負います。反対に、相手方に正当な理由がなければ、権限外の行為の表見代理は成立しません。
なお、相手方が代理人の権限ではなく、行為を本人自身がしたものだと信じていた場合でも、その信頼に正当な理由があるときは、民法110条が類推適用されることがあります。
まとめ
- 権限外の行為とは、代理人が基本代理権の範囲を超えてした行為です。
- 表見代理の成立には、基本代理権、権限外の行為、相手方の正当な理由が必要です。
- 正当な理由は、基本的に相手方が善意・無過失であることを意味します。
- 成立すると、本人が権限外の契約についても履行責任を負います。
