生命や身体を侵害された場合の損害賠償請求権にも、消滅時効があります。ただし、債務不履行による損害賠償請求権では、生命・身体への侵害に配慮し、通常よりも長い期間が定められています。この記事では、主観的・客観的な起算点と、時効の完成猶予・更新について説明します。
生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間
主観的な起算点からは5年
債権者が「権利を行使することができることを知った時」から、原則として5年で消滅時効にかかります。生命や身体が侵害されたケースでも、この主観的な起算点からの期間は通常の債権と変わりません。
客観的な起算点からは20年
法律上、権利を行使することができる時から数える客観的な期間は、通常の債務不履行による損害賠償請求権では10年です。これに対し、人の生命または身体が侵害された場合は、特則により20年に延長されます。
| 請求権 | 主観的起算点 | 客観的起算点 |
|---|---|---|
| 通常の債務不履行 | 5年 | 10年 |
| 生命・身体の侵害 | 5年 | 20年 |
したがって、生命・身体の侵害では「権利を行使することができることを知った時から5年」と「権利を行使することができる時から20年」の両方を確認します。
消滅時効の起算点を判断する方法
「権利を行使することができることを知った時」とは
主観的起算点は、債権者が権利を行使することができることを知った時です。この時から主観的な5年が進みます。
「権利を行使することができる時」とは
法律上の障害がない時を指します。病気や天災など、事実上の障害があっても、それだけで時効の進行が止まるわけではありません。
起算点の違いを確認
客観的起算点は、債権の期限や内容によって異なります。時効を確認する際は、主観的起算点と客観的起算点の両方から期間を計算します。
時効期間の進行に影響する制度
時効の完成猶予
裁判上の請求、支払督促、調停などが行われると、一定の間、時効は完成しません。また、催告をすると、その時から6か月間、時効の完成が猶予されます。権利について協議する旨を書面で合意した場合も、合意から1年など、法律で定められた期間は完成が猶予されます。
時効の更新
確定判決などによって権利が確定した場合は、その手続が終了した時から新たに時効が進行します。権利の承認があった場合も、承認時から時効が新しく進みます。
時効の援用
期間が経過しただけで、時効の利益が当然に確定するわけではありません。時効の利益を受けるには、時効を援用する、つまり時効の利益を受ける意思を示す必要があります。
まとめ
生命・身体の侵害による債務不履行の損害賠償請求権は、主観的な起算点から5年、客観的な起算点から20年で消滅時効にかかります。延長されるのは、客観的起算点からの期間です。裁判上の請求や催告、協議、権利の承認によって、時効の完成が猶予・更新される場合もあるため、起算点とあわせて確認しましょう。
