事務管理で費用や損害を請求できる?費用償還請求の要件を解説

事務管理とは?費用償還請求の前提

事務管理の意味

事務管理とは、法律上の義務がない人が、他人のために事務の管理を始めることです。管理をする人を「管理者」、事務の本人を「本人」といいます。契約がなくても、事務管理が成立すると、当事者間に一定の権利や義務が発生します。

管理者は、事務の性質に応じて本人の利益に最も適した方法で管理しなければなりません。本人の意思を知っている、または推測できる場合は、その意思にも従う必要があります。また、本人がすでに知っている場合を除き、管理を始めたことを遅滞なく通知し、本人などが管理できるようになるまで原則として管理を続けます。

事務管理で費用償還請求できる要件と範囲

本人のために有益な費用を支出したこと

管理者が本人のために有益な費用を支出したときは、本人に償還を請求できます。判断の基準は、管理をしていた時点で、客観的に本人の利益になったといえるかどうかです。原則として、そのような費用の全額が請求の対象になります。

本人のために負担した有益な債務も請求できる

実際に金銭を支出した場合だけでなく、本人のために有益な債務を負担した場合も対象です。管理者が本人のために負担した債務について弁済したときは、その分を本人に請求できます。

本人の意思に反する事務管理では請求範囲が限定される

管理者の行為が本人の意思に反していた場合は、例外的に請求できる範囲が狭くなります。この場合、請求時点で本人が現に受けている利益の限度でしか、費用の償還を求められません。

つまり、管理時点で客観的に本人の利益となった場合は原則として費用全額、本人の意思に反していた場合は請求時に残っている利益の範囲という違いがあります。

管理者は報酬を請求できない

費用の償還が認められても、事務管理をしたこと自体への報酬まで請求できるわけではありません。費用の返還を求めることと、労務の対価として報酬を求めることは別の問題です。

事務管理で受けた損害は請求できる?

管理者自身が受けた損害は請求できない

管理者が事務管理をするにあたり過失なく損害を受けた場合でも、その損害について本人に賠償を請求することはできません。委任契約の受任者に認められる損害賠償請求の規定は、事務管理には適用されないためです。

管理者の義務違反による損害賠償責任との違い

一方、管理者が通知義務や管理継続義務などに違反すれば、本人に対して損害賠償責任を負うことがあります。これは、管理者が本人へ損害賠償を請求できるかという問題とは反対に、本人が管理者へ請求できるかという問題です。

なお、本人の身体・名誉・財産への急迫の危害を避けるための緊急事務管理では、管理者に悪意または重大な過失がない限り、本人に対する損害賠償責任を負いません。

まとめ|事務管理で請求できる費用・損害の整理

  • 本人のために有益な費用は、原則として全額を請求できる
  • 本人のために負担した有益な債務の弁済も請求できる
  • 本人の意思に反する場合は、現に残る利益の範囲に制限される
  • 事務管理そのものへの報酬は請求できない
  • 管理者自身が事務管理にあたり過失なく受けた損害は、本人に請求できない

費用償還請求と損害賠償請求は、要件も法律上の扱いも異なるため、分けて検討することが重要です。