正当防衛・緊急避難なら不法行為にならない?違法性阻却事由を解説

他人の権利や法律上保護される利益を侵害すると、原則として不法行為が成立し、損害賠償責任を負う可能性があります。

もっとも、他人の不法行為に対し、自己または第三者の権利や法律上保護される利益を防衛するため、または他人の物から生じた急迫の危難を避けるため、やむを得ず他人に損害を与えた場合には、違法性が否定され、不法行為が成立しない場合があります。これを違法性阻却事由といい、民法720条は正当防衛と緊急避難について定めています。

正当防衛・緊急避難に当たると不法行為にならない場合がある

不法行為が成立するための基本的な要件

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を発生させる行為です。不法行為が成立するには、一般に次の要件を満たす必要があります。

  • 損害が発生していること
  • 故意または過失があること
  • 加害者に責任能力があること
  • 行為が違法であること
  • 行為と損害との間に因果関係があること

したがって、他人に損害を与えたからといって、直ちに不法行為になるわけではありません。

違法性阻却事由とは

正当防衛や緊急避難は、上記の要件のうち「違法な行為であること」を否定する事情です。要件を満たし、やむを得ず行ったと認められれば、損害が発生していても、不法行為が成立しない場合があります。

正当防衛が認められる要件

正当防衛の意味

正当防衛とは、他人の不法行為に対し、自己または第三者の権利や法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず不法行為者または第三者に対して加害行為をすることです。民法720条1項では、次の事情が必要です。

  • 他人の不法行為があること
  • 自己または第三者の権利や法律上保護される利益を守る目的があること
  • 防衛のため、やむを得ず行ったこと
  • 加害行為の相手が、不法行為者または第三者であること

緊急避難が認められる要件

緊急避難の意味

緊急避難とは、他人の物から生じた急迫の危難を避けるため、その物を損傷することです。民法720条2項により、正当防衛に関する規定が準用されます。具体的には、危難が他人の物から生じていること、危難が急迫していること、その危難を避けるため、その物を損傷したこと、そして行為がやむを得なかったことが必要です。

正当防衛との違い

正当防衛は、他人の不法行為に対し、自己または第三者の権利や法律上保護される利益を防衛する行為です。これに対し、緊急避難は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるため、その物を損傷する行為です。いずれも「やむを得ない」ことが必要であり、要件を満たさなければ不法行為責任を負う可能性があります。