行政行為の「取消し」には、審査請求や取消訴訟を通じて行う争訟取消しと、行政庁が自ら行う職権取消しがあります。主な違いは、誰が、どのようなきっかけで取り消すかです。
行政行為の「取消し」とは
取消しとは、行政行為が成立した時点から瑕疵を有していた場合に、その効力を成立時にさかのぼって失わせることです。
違法な行政行為であっても、直ちに効力がなくなるとは限りません。権限を持つ行政機関や裁判所などが取り消すことで、初めて効力が否定される場合があります。
「撤回」との違い
| 項目 | 成立時の状態 | 効力が失われる時点 |
|---|---|---|
| 取消し | 違法・瑕疵がある | 原則として成立時にさかのぼる |
| 撤回 | 成立時は適法 | 原則として撤回後から将来に向かう |
つまり、後から生じた事情によって将来の効力を失わせる「撤回」は、成立時から問題があった行政行為を対象とする「取消し」と区別されます。
争訟取消しと職権取消しの違い
争訟取消しとは
争訟取消しとは、行政不服審査法に基づく審査請求や、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟などを通じて、審査庁や裁判所といった第三者的な機関に行政行為を取り消してもらうことです。取消訴訟は、原則として6か月以内に提起する必要があります。
職権取消しとは
職権取消しとは、行政行為をした行政庁(処分庁)が、自らその違法・不当を認めて取り消すことです。もともと違法な行政行為を是正するものなので、原則として、取消しについて法律に明文の規定がなくても認められるとされています。
両者の比較
| 比較項目 | 争訟取消し | 職権取消し |
|---|---|---|
| 取消しをする機関 | 審査庁・裁判所など | 処分庁 |
| きっかけ | 審査請求・取消訴訟など | 行政庁自身の判断 |
| 手続 | 行政不服審査・行政訴訟 | 行政庁による職権上の判断 |
| 効果 | 原則として成立時にさかのぼって効力消滅 | 原則として成立時にさかのぼって効力消滅 |
職権取消しにはどのような制約があるか
侵害的行政行為は職権取消しが認められやすい
違法な行政行為が国民に不利益を与える侵害的行政行為である場合には、侵害が取り除かれることになるため、職権取消しをすることが可能です。
授益的行政行為の職権取消しには制約がある
一方、営業の許可など、国民に利益を与える授益的行政行為を取り消すと、相手方の利益や信頼を損ないます。そのため、行政庁がいつでも自由に取り消せるわけではありません。
取消しによって相手方が受ける不利益と、取消しをせず行政行為に基づく効果を維持する不利益を比較し、行政行為を放置することが公共の福祉に照らして著しく不当といえる場合に限り、職権取消しが認められます。
判断の基準は行政行為がされた時点の事情
授益的行政行為を職権で取り消せるかは、原則として行政行為がされた時点の事情を基準に判断します。当時の事情から違法または不当であったと認められない場合、それを理由とする職権取消しは許されず、違法となります。
