行政契約に契約自由の原則は適用される?水道の給水契約を例に解説

行政契約は、私法上の契約と似た形態をとります。しかし、行政サービスを提供する場面では、契約自由の原則がそのまま妥当するとは限りません。

ここでは、水道の給水契約を例に、行政契約と契約自由の原則の関係を解説します。

行政契約にも契約自由の原則は適用されるのか

行政契約とは

行政契約とは、行政主体が行政上の目的を達成するために、一方または双方の当事者となって締結する契約です。基本的に、私法上の契約と似た形態をとります。

行政主体と住民との間で水道水を供給する契約も、行政契約の一つです。水道の使用は、行政庁が住民に対して「使用許可処分」をすることで成立するのではなく、行政主体と住民が給水契約を締結することによって成立します。

契約自由の原則がそのまま適用されるわけではない

行政契約は私法上の契約と似ていますが、水道水の供給などの行政サービスでは、契約自由の原則が妥当しない場合があります。

行政サービスについて法律上の定めがある場合には、行政主体はその定めに従う必要があります。そのため、行政契約では、契約自由の原則が修正されることがあります。

水道の給水契約では契約自由の原則が制限される

水道事業者は正当な理由なく給水契約を拒めない

水道法15条1項は、正当な理由がないのに、水道水の供給を拒否することができない旨を定めています。

そのため、水道事業者は、私人間の契約のように、自由に給水契約の締結を拒否することはできません。

給水契約を拒否できる場合もある

ただし、正当な理由がある場合まで、必ず契約を締結しなければならないわけではありません。

最高裁判所は、水道水の需要が急激に増加し、近い将来、需要に応じきれず深刻な水不足が生じることが予測される状況では、給水契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制することが適法となる場合があると判断しました。

水不足を防ぐための給水契約の拒否が認められた判例

最判平成11年1月21日の判断

この判例では、マンション420戸を分譲する目的でされた給水契約の申込みについて、給水契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制する施策を講ずることは、やむを得ない措置として許されると判断されました。

建築計画を数年度に分け、井戸水を併用することにより水道水の使用量を抑える計画であったとしても、給水契約を拒んだことには、水道法15条1項の「正当な理由」があるとされました。

判例から分かること

給水契約では、申込みがあれば必ず契約を締結しなければならないわけではありません。一方で、契約の締結を拒むには、水道法15条1項にいう「正当な理由」が必要です。

まとめ

行政契約は私法上の契約と似た形態をとりますが、行政サービスについては、契約自由の原則がそのまま妥当するとは限りません。

水道の給水契約は行政契約であり、水道法15条1項によって、正当な理由のない給水拒否が制限されています。ただし、近い将来に深刻な水不足が生じることが予測される場合に、急激な水道水の需要の増加を抑制するため給水契約を拒否することは、正当な理由にあたり得ます。