行政代執行とは?対象となる義務や実施要件をわかりやすく解説

行政代執行とは、法律や条例、行政庁の命令などに基づく行為を義務者が行わないとき、行政庁が本人に代わってその行為を実施し、かかった費用を義務者から徴収する制度です。もっとも、義務違反があれば常に実施できるわけではありません。対象となる義務や、実施に必要な要件、手続を確認しましょう。

行政代執行とは

行政庁や第三者が義務者に代わって行為を行う制度

行政上の義務が履行されない場合に、行政庁が自ら義務を実行したり、業者などの第三者に実行させたりする手続です。費用は、義務者から徴収されます。

行政代執行は、将来に向けて行政上の目的を実現するための制度です。過去の違反に対して罰を科す行政罰とは、目的が異なります。

例えば、違法建築物の除去命令を受けた所有者が除去しない場合、行政庁が解体業者に解体させ、後から所有者に費用を請求することがあります。

行政代執行法と個別法

行政上の義務の履行確保については、別に法律で定めるものを除き、一般法である行政代執行法が適用されます。建築基準法などの個別法に代執行の規定がある場合は、その規定が適用されることがあります。

行政代執行の対象となる義務と実施要件

対象は代替的作為義務

対象となるのは、他人が代わりに実行できる作為義務である代替的作為義務です。物の撤去や除却などがこれに当たります。一方、本人でなければ実行できない義務や、一定の行為をしない不作為義務は、行政代執行の対象になりません。

行政代執行を実施できる2つの要件

行政代執行法2条により、次の要件をいずれも満たす必要があります。

  1. 法律、法律の委任に基づく命令・規則・条例、または法律に基づく行政庁の命令による代替的作為義務があり、義務者が履行していないこと
  2. 他の手段で履行を確保することが困難で、かつ、不履行を放置することが著しく公益に反すると認められること

したがって、単に義務の不履行があるだけでは足りず、他の手段での履行確保が困難であり、放置が著しく公益に反することも必要です。

相手方が不明な場合の簡易代執行

個別法に根拠がある場合は、代替的作為義務を負う相手方が不明でも、期限を定めて必要な措置を行うよう公告し、実施されなければ代執行できることがあります。これを簡易代執行といい、建築基準法9条11項・12項などに規定されています。

行政代執行の手続と費用

  1. 戒告:行政庁は相当な履行期限を定め、期限までに履行しなければ代執行を行う旨を文書で戒告します。
  2. 代執行令書:履行されなければ、実施時期、執行責任者の氏名、費用の概算見積額を記載した代執行令書を送付します。
  3. 緊急時:非常の場合や危険が切迫し、行為を急速に実施する緊急の必要があって、手続を行う時間がない場合は、戒告や令書の送付なしに実施できます。
  4. 現場での証票提示:執行責任者は証票を携帯し、求められれば提示します。
  5. 費用徴収:行政庁は、実際に要した費用の額と納付期限を定め、文書で納付を命じます。納付されなければ、国税滞納処分の例により徴収でき、行政庁はその費用について国税・地方税に次ぐ順位の先取特権を有します。

まとめ

行政代執行とは、義務者が履行しない代替的作為義務を、行政庁や第三者が代わりに実行する制度です。実施には、義務の不履行に加え、他の手段での履行確保が困難であり、放置が著しく公益に反することが必要です。通常は戒告と代執行令書を経て実施され、費用は義務者から徴収されます。