議員定数不均衡とは?投票価値の平等と違憲判断の基準を解説

議員定数不均衡とは、選挙区ごとの選挙人数に対する議員定数の比率に較差がある状態です。選挙区によって1票が選挙の結果に及ぼす影響力に差が生じるため、「投票価値の平等」との関係が問題になります。

議員定数不均衡とは?投票価値の平等との関係

議員定数不均衡の意味

たとえば、選挙区Aでは有権者10万人につき議員1人、選挙区Bでは有権者20万人につき議員1人が選ばれるとします。この場合、Aの有権者の1票は、Bの有権者の1票よりも議員を選ぶ結果に強く反映されます。このような差は、一般に「1票の格差」と呼ばれます。

投票価値の平等は憲法上の要請

憲法14条1項の「法の下の平等」は、選挙権を持てるかどうかだけでなく、各人の投票が選挙結果に及ぼす影響力にも及びます。ただし、投票価値を数字上完全に同じにすることまで求められるわけではありません。議員総数、地域の代表、選挙制度の目的なども考慮されるためです。

議員定数不均衡が違憲と判断される基準

較差が合理性を失う程度か

最高裁判所は、較差の数字だけで機械的に違憲と判断するわけではありません。選挙制度の仕組み、定数配分の方法、地域の特性などを考慮しても、なお不平等を合理的に説明できない程度に達しているかを判断します。正当化できる特別な理由があるかも重要です。

合理的期間内に是正されたか

人口移動によって、制度を作った当時は問題がなかった較差が拡大することがあります。しかし、較差が生じた瞬間に直ちに違憲となるわけではありません。投票価値の不平等が憲法上問題となる程度に達した後、国会や議会が合理的期間内に是正しなかった場合に、違憲と判断されることがあります。

「違憲状態」と「違憲」の違い

  • 違憲状態:投票価値の不平等が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っている状態
  • 違憲:違憲状態に加えて、合理的期間内に是正されなかったと判断された状態

そのため、違憲状態とされても、国会の改革への取組などを踏まえ、合理的期間内に是正されなかったとはいえないとして、直ちに違憲とは判断されない場合があります。

違憲判決でも選挙が無効になるとは限らない

定数配分規定が違憲と判断されても、選挙自体は無効とせず、規定の違法性を宣言するにとどめる判断がされることがあります。これは、事情判決の法理によるものです。衆議院については、各選挙区の定数配分が全体として結び付いているとして、配分規定全体を違憲とした判例もあります。

選挙の種類ごとに異なる議員定数不均衡の判断

衆議院議員選挙

衆議院では投票価値の平等が重視されます。最高裁は、最大較差が約5倍だった1972年の選挙について、合理的期間内に是正されなかったとして違憲と判断しました。一方、その後は、最大較差が2倍前後でも、区割りの見直しや国会の是正努力を考慮して、違憲状態にとどめたり合憲としたりしています。したがって、2倍を超えたから直ちに違憲、2倍未満なら必ず合憲という単純な基準ではありません。

参議院議員選挙

参議院には、半数改選や衆議院とは異なる役割があります。そのため、かつては衆議院より広い立法裁量が認められていました。しかし、参議院であることだけを理由に投票価値の平等が後退するわけではありません。最高裁は、最大較差が約5倍だった選挙について著しい不平等状態に至ったとしながら、制度改革に向けた取組を踏まえ、定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしました。

地方議会議員選挙

地方議会では、人口比例が定数配分の基本的な基準とされています。最高裁は、東京都議会議員選挙で最大較差が約7.45倍に達した事例について、地域間の均衡などを考慮しても合理化できず、合理的期間内に是正されなかったとして、定数配分規定を違憲と判断しました。

このように、議員定数不均衡の違憲判断では、較差の大きさだけでなく、選挙制度の目的、地域事情、そして是正までに要した期間が総合的に考慮されます。