公共の福祉とは?人権が制約される理由をわかりやすく解説

公共の福祉とは、ある人の人権と他の人の人権が衝突したときに、双方の権利を調整するための公平の原理です。

人権は「侵すことのできない権利」として保障されていますが、他人の人権との関係で、常に無制約というわけではありません。ただし、公共の福祉を理由にすれば、国が自由に人権を制限できるという意味でもありません。

公共の福祉とは

人権同士の衝突を調整する公平の原理

すべての人の自由を一切制限しないと、ある人の行動が他人の自由を妨げることがあります。

たとえば、ヘビースモーカーのAさんと煙草が嫌いなBさんが同じ場所に居合わせたとします。Aさんには煙草を吸う自由がありますが、Bさんには煙草を吸わない自由があります。Aさんの自由を無制限に認めればBさんの自由が損なわれ、Bさんの自由を優先すればAさんの自由が損なわれます。

このような場合に、ある人の人権と他の人の人権を調整する原理が公共の福祉です。

個人の利益ではなく、公共的・社会的な利益を指す

公共の福祉は、単に誰かが不快に感じることや、特定の個人の利益を指すものではありません。人権相互の調整に関わる、公共的・社会的な利益を意味します。

なぜ人権は公共の福祉によって制約されるのか

人権を無制約に保障すると、他人の人権と衝突するため

人権はすべての人に保障されるため、権利の行使が他人の権利を妨げる場合があります。そのとき、権利を一切制限しなければ、かえって他人の人権を保障できません。

公共の福祉は、人権を否定するための考え方ではなく、人権同士の矛盾や衝突を調整するために必要となるものです。

憲法12条・13条が定めていること

日本国憲法12条は、国民が常に公共の福祉のために人権を利用する責任を負うと定めています。13条も、生命・自由・幸福追求に対する権利について、公共の福祉に反しない限り、国政の上で最大の尊重を必要とすることを定めています。

このほか、公共の福祉という文言は、22条1項の居住・移転・職業選択の自由や、29条2項の財産権にも登場します。人権は重要な権利である一方、他人の人権や社会との関係で一定の調整を受けることが分かります。

公共の福祉による人権制約に限界はあるのか

公共の福祉を理由に、無制限に人権を制限できるわけではない

公共の福祉は、国が自由に人権を制限するための包括的な根拠ではありません。人権の制約が正当化されるかどうかは、公共の福祉だけでなく、人権の性質や規制の目的などを考慮して判断されます。

  • 制限される人権の性質
  • 規制の目的
  • 規制の必要性
  • 制限の内容や程度

人権の性質によって、許される制約の程度は異なります。そのため、「公共の福祉に関係するから制限できる」と一律に決まるのではなく、具体的な規制が人権に与える影響まで確認する必要があります。

「公共の福祉」と「国の都合」は同じではない

公共の福祉は、行政の都合を優先すればよいという考え方ではありません。人権同士の矛盾や衝突を調整し、実質的に公平な状態を実現するための原理です。

したがって、制約の目的と手段が、人権との関係で合理的かどうかが問題となります。

公共の福祉による人権制約を理解するポイント

  • 人権は保障されますが、他人の人権との衝突を避けるため、一定の制約を受けることがあります。
  • 公共の福祉は、個人の権利を一律に制限する考え方ではなく、人権同士を調整する原理です。
  • その具体的な内容は、すべての場面で一律に決まるものではありません。
  • 制約の適否は、権利の性質、規制の目的や必要性、制限の程度などを踏まえて判断されます。

まとめ

公共の福祉とは、人権同士の矛盾や衝突を調整するための公平の原理です。人権が制約されるのは、ある人の権利を無制約に認めると、他人の人権が損なわれることがあるためです。

憲法12条・13条などは、人権が公共の福祉との関係で調整されることを定めています。ただし、公共の福祉を理由に国が自由に人権を制限できるわけではありません。どの人権を、どの目的で、どの程度制限するのかを具体的に検討する必要があります。