受益権(国務請求権)とは、国や地方公共団体に対して、一定の行為や救済を求める権利です。国家から干渉されないことを求める自由権とは異なり、国家による積極的な対応を求める点に特徴があります。
社会権も国家に対する請求権であるため、両者は混同されがちです。この記事では、受益権の意味や種類、社会権との違いを解説します。
受益権(国務請求権)とは
国家に積極的な行為を求める権利
受益権は、国務請求権とも呼ばれます。国や地方公共団体に対し、要望を述べたり、裁判による救済や損害の賠償を求めたりする権利です。基本的人権を実現・確保するための基本権と位置づけられます。
憲法上の受益権の種類
| 種類 | 憲法 | 内容 |
|---|---|---|
| 請願権 | 16条 | 国や地方公共団体の機関に要望を述べる権利 |
| 国家賠償請求権 | 17条 | 公務員の不法行為による損害について賠償を求める権利 |
| 裁判を受ける権利 | 32条 | 裁判所に訴えを提起し、裁判による救済を求める権利 |
| 刑事補償請求権 | 40条 | 抑留・拘禁後に無罪の裁判を受けた場合、国に補償を求める権利 |
受益権の具体的な内容
請願権
憲法16条は、損害の救済、公務員の罷免、法律・命令・規則の制定や改廃などについて、国や地方公共団体の機関に平穏に要望する権利を保障しています。請願したことを理由に、差別的な扱いを受けることもありません。
官公署は請願を受理し、誠実に処理する必要があります。ただし、請願内容について必ず審理・判定する法的義務まで負うわけではありません。
裁判を受ける権利
憲法32条は、何人も裁判所で裁判を受ける権利を奪われないと定めています。民事事件や行政事件では、裁判所に訴えを起こして救済を求める権利を意味します。刑事事件では、裁判所以外の機関によって裁判を受けたり、刑罰を科されたりしないことを意味します。この権利は、日本国民に限らず外国人にも保障されます。
なお、非公開で対審によらない非訟事件手続は、判例上、憲法32条の「裁判」には含まれないとされています。
国家賠償請求権
憲法17条により、公務員の不法行為によって損害を受けた場合、法律の定めに従い、国や公共団体に賠償を求められます。具体的な要件や手続は、法律によって定められています。
刑事補償請求権
憲法40条は、抑留または拘禁された後に無罪の裁判を受けた場合、法律の定めに従って国に補償を求める権利を保障しています。
国家賠償とは異なり、国の故意・過失は必要ありません。国の行為が適法であった場合でも、補償の対象となり得ます。「無罪の裁判」は、刑事訴訟法上の手続における無罪の確定判決を指し、少年審判手続における不処分決定は含まれません。
受益権と社会権の違い
共通点
受益権と社会権は、いずれも国家に積極的な対応を求める権利です。国家から干渉されないことを求める自由権とは、この点で異なります。
違いは権利の目的
| 比較項目 | 受益権(国務請求権) | 社会権 |
|---|---|---|
| 目的 | 人権侵害からの救済や、権利を実現する手続を求める | 人間らしい生活のため、国家に社会的・経済的な施策を求める |
| 例 | 請願権、国家賠償請求権、裁判を受ける権利、刑事補償請求権 | 生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権 |
| 背景 | 自由国家の思想の延長線上で発展 | 社会国家・積極国家の思想に基づき発展 |
つまり、受益権は、侵害された権利を救済したり、権利を行使するための手続を保障したりするものです。一方、社会権は、生活や教育、労働について、国家による積極的な配慮を求める権利と整理できます。
