「無効」と「取消し」は、どちらも法律行為の効力を失わせる点で似ています。しかし、行為をした時点で有効か、誰が主張できるか、期間制限があるかなどに違いがあります。
無効と取消しの違いを一覧で比較
無効とは
無効とは、法律行為が最初から法律上の効力を生じないことです。たとえば、公序良俗に反する法律行為は無効となります(民法90条)。無効な行為は、当事者だけでなく第三者も無効を主張できます。また、時間が経過しても無効を主張できなくなることはありません。
取消しとは
取消しとは、いったん有効に扱われている法律行為について、取消権を行使し、初めから効力がなかったものとして扱うことです(民法121条)。取消しがされるまでは一応有効ですが、取消権者が取り消すと、遡って効力を失います。
主な取消原因には、制限行為能力者の行為、錯誤、詐欺、強迫による意思表示があります。取消しは、法律上認められた取消権者だけが行使できます。
無効と取消しの主な違い
| 比較項目 | 無効 | 取消し |
|---|---|---|
| 効力 | 初めから効力がない | 取消し前は一応有効 |
| 主張・行使できる人 | 第三者も主張できる | 法律上の取消権者に限られる |
| 期間制限 | ない | 5年または20年の制限がある |
| 追認 | 原則として有効にならない | 追認により確定的に有効となる |
無効と取消しは誰が主張・行使できるのか
無効を主張できる人
無効な法律行為は、当事者に限らず第三者も主張できます。ただし、実際に無効となる法律上の原因が存在しなければなりません。
取消しを行使できる人
制限行為能力を理由とする取消しは、制限行為能力者、その代理人・承継人、同意権者などが行使できます。錯誤・詐欺・強迫による取消しは、瑕疵のある意思表示をした本人、その代理人または承継人に限られます。誰でも自由に取り消せるわけではありません。
取消権の期間制限
取消権は、追認できる時から5年間行使しないと時効で消滅します。また、行為の時から20年経過した場合も消滅します。「追認できる時」とは、原則として取消しの原因となった状況がなくなり、かつ取消権があることを知った時点です。
無効・取消しの後に法律行為や返還義務はどうなるか
無効または取消しによって、法律行為は初めからなかったものとして扱われます。すでに金銭や物を受け取っていれば、原則として相手方へ返還する原状回復義務を負います。
ただし、意思能力を欠く者や制限行為能力者は、現に利益を受けている限度で返還すれば足ります。これは返還時点で残っている利益を意味します。受け取った金銭を単に失った場合と異なり、生活費に充てて支出を免れた場合などは、利益が形を変えて残っていると判断されることがあります。無償行為による給付を受け、無効または取消しができるものであることを知らなかった者にも、同様の制限があります。
追認すると無効・取消しはどうなるか
無効な法律行為の追認
無効な行為は、原則として追認しても有効になりません(民法119条)。ただし、無効であることを知って追認した場合は、追認時に新たな法律行為をしたものとみなされます。ただし、その新たな行為も有効要件を満たす必要があります。
取り消すことができる行為の追認
取消しができる行為を取消権者が追認すると、その行為は確定的に有効となり、以後は取り消せません(民法122条)。ただし、原則として取消しの原因がなくなり、取消権を知った後に追認する必要があります。法定代理人や保佐人・補助人が追認する場合などは、取消しの原因となった状況がなくなっていることを必要としません(民法124条2項)。
法定追認
取り消すことができる行為について、全部または一部の履行、履行の請求、更改、担保の供与、取得した権利の全部または一部の譲渡、強制執行などの事実があると、追認したものとみなされます(民法125条)。
