時効の完成猶予・更新は、時効の進み方に影響を与える制度です。ただし、その効果が関係者全員に及ぶとは限りません。原則として、事由が生じた当事者とその承継人との間に限られます。これを相対効といいます。
ここでは、完成猶予と更新の違い、相対効の範囲、通知が必要となる場面を解説します。
時効の完成猶予と更新とは
完成猶予は「時効の完成を遅らせる」制度
完成猶予とは、一定の事由により、時効の完成を猶予する制度です。事由が終了するまで時効が完成しない場合や、事由の終了後も6か月など一定期間、時効の完成が猶予される場合があります。
主な事由には、裁判上の請求、支払督促、調停、破産手続等への参加、強制執行、担保権の実行、仮差押え・仮処分、催告、権利について協議する旨の合意などがあります。完成猶予は、通常、これまで進んだ時効期間をゼロに戻すものではありません。
更新は「これまでの時効の進行をリセットする」制度
更新が生じると、それまでの時効の進行は無意味となり、更新事由の終了時などから新たな時効期間が進みます。たとえば、裁判上の請求等による完成猶予の後に権利が確定した場合、強制執行等が終了しても債権が残る場合、権利の承認があった場合が更新事由です。
完成猶予は時効の完成を遅らせる制度、更新は新たに時効を進行させる制度と整理すると分かりやすいでしょう。
時効の完成猶予・更新の相対効とは
原則は「事由が生じた当事者とその承継人の間だけ」に効力が及ぶ
民法153条は、裁判上の請求等や強制執行等による完成猶予・更新について、事由が生じた当事者とその承継人との間でのみ効力を認めています。仮差押え、仮処分、催告、協議を行う旨の合意による完成猶予も同様です。承認による更新も、更新の事由が生じた当事者とその承継人との間に限って効力を有します。
相対効の具体例
たとえば、AとBがCに対して連帯債務を負っている場合に、AがCに対して債務を承認しても、Bについて時効が更新されるわけではありません。承認をしたAについての更新と、Bの時効の進行は分けて考えます。
相対効の例外
相対効は原則であり、法律に特別の定めがある場合は別です。地役権の不可分性に関する規定がその一例です。また、判例上、物上保証人との関係では、担保権の付従性などを理由に、債務者の承認による被担保債権の時効更新の効力を否定できないとされています。
時効の利益を受ける者への通知義務
通知が必要となる手続
強制執行、担保権の実行、競売、財産開示手続、仮差押え、仮処分などの手続を、時効の利益を受ける者に対してしない場合は、その者に通知をした後でなければ、その者に対して完成猶予・更新の効力が生じません。
通知義務の意味
これは、時効の利益を受ける者が知らない間に、時効の完成猶予や更新の効力が生じることを防ぐためです。すべての完成猶予・更新に通知が必要なわけではなく、民法154条が対象とする手続に限られます。
まとめ
- 完成猶予は、時効の完成を遅らせる制度です。
- 更新は、それまでの時効の進行を無意味にし、新たに時効を進める制度です。
- 効力は原則として、事由が生じた当事者とその承継人の間に限られます。
- 強制執行等や仮差押え等では、時効の利益を受ける者への通知が効力発生の条件となる場合があります。
