選択債権では、複数の給付のうち一つを選ぶことで、債権の内容が確定します。では、選ばれた給付の効力は、選択した時点から生じるのでしょうか。それとも、契約を結んだ時点までさかのぼるのでしょうか。
民法411条は、原則として選択に遡及効を認めています。ただし、第三者の権利を害することはできません。
選択債権と「選択の効力」の基本
選択債権とは
選択債権とは、数個の給付の中からの選択によって、債権の内容が定まる債権です(民法406条)。選択前は複数の給付が候補として存在し、選択後は、選ばれた給付が債権の目的になります。
たとえば、「甲建物または乙建物のいずれか一つを引き渡す」という契約では、どちらを引き渡すかが決まるまで、給付の内容は確定していません。
選択はいつ効力を生じるか
選択権者は、相手方に対する意思表示によって選択を行います(民法407条1項)。選択権者の一方的な意思表示によって、給付の内容が確定します。
ただし、意思表示をした後は、相手方の承諾がなければ撤回できません(同条2項)。なお、選択権は原則として債務者にあります(民法406条)。債権が弁済期にある場合に、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、その期間内に選択をしないときは、選択権が相手方に移転します(民法408条)。
選択の効力は債権の発生時にさかのぼる
民法411条本文は、選択の効力について遡及効を定めています。つまり、選択された給付は、選択した時点から債権の目的になるのではなく、原則として債権が発生した時から目的であったものとして扱われます。
先ほどの例で、債務者が甲建物を選択したとします。この場合、契約が成立した時点から、甲建物を引き渡す債権であったことになります。
第三者の権利は選択の遡及効によって害されない
第三者の権利を害することはできない
もっとも、遡及効には重要な制限があります。民法411条ただし書により、選択の効力によって第三者の権利を害することはできません。
たとえば、契約成立後、選択が行われる前に、債務者が選択対象の甲建物を第三者へ譲り渡したとします。その後、債権者が甲建物を選択しても、遡及効によって第三者の権利を害することはできません。
第三者との優劣は対抗要件によって判断される
選択された物について債権者と第三者が権利を争う場合、両者の優劣は、民法177条の対抗要件によって決せられます。そのため、民法411条ただし書は、実質的には無意味な規定であると解されています。
まとめ
- 選択債権は、複数の給付から一つを選ぶことで内容が確定する。
- 選択の効力は、原則として債権が発生した時にさかのぼる。
- ただし、遡及効によって第三者の権利を害することはできない。
- 第三者との関係では、民法177条の対抗要件によって権利の優劣が判断される。
したがって、選択の効力は「原則として遡及するが、第三者の権利によって制限される」と理解することが重要です。
