債権者代位権の行使方法とは?裁判外での行使や直接請求を解説

債務者が第三者に対する権利を放置している場合、債権者が代わりにその権利を行使できることがあります。これが債権者代位権です。裁判を起こさずに行使できる一方、法律上の要件や請求できる範囲には限界があります。

債権者代位権を行使するための前提条件

債権者代位権とは

債権者代位権とは、債務者が第三者に対する権利を行使しないときに、債権者が自己の債権を保全するため、債務者に代わってその権利を行使する制度です。

  • 債権者:自分の債権を回収したい人
  • 債務者:債権者への支払義務があり、第三者に対する権利を持つ人
  • 第三債務者:債務者に対して支払いや引渡しをする人

債権者は債務者の代理人になるのではなく、自己の名において権利を行使します。

行使に必要な主な要件

原則として、次の要件を満たす必要があります。

  • 債務者が無資力であること。つまり、債務者の財産だけでは債権者が十分な弁済を受けられない状態であること
  • 債務者が被代位権利を自ら行使していないこと
  • 対象となる権利が一身専属権や差押えを禁止された権利ではないこと
  • 原則として、債権者の債権の弁済期が到来していること。ただし、権利の保存行為であれば弁済期前でも行使できること
  • 債権者の債権が強制執行によって実現できること

なお、特定の権利を実現するために債権者代位権を用いる「転用」の場合には、債務者の無資力は必要ありません。

代位行使できる権利の範囲

債務者本人の意思に委ねるべき一身専属権は、原則として代位行使できません。配偶者の同居請求権や離婚請求権などがその例です。一方、取消権・相殺権・解除権などは、一身専属権ではないため、代位行使できます。

名誉毀損による慰謝料請求権は原則として対象外ですが、慰謝料額について合意が成立した場合や、支払いを命じる債務名義が成立した場合など、具体的な金額が客観的に確定していれば対象となることがあります。遺留分侵害額請求権も原則として対象外ですが、権利者が譲渡などによって権利行使の確定的意思を外部に示した特段の事情がある場合は例外です。

債権者代位権の具体的な行使方法

裁判外で行使する方法

債権者代位権は、訴訟を起こさずに行使できます。債権者は、第三債務者に対して自己の名において、債務者が有する権利の履行を求めます。

裁判上で行使する方法

第三債務者が任意に履行しない場合、債権者は自己の名において、被代位権利の履行を求める訴えを提起できます。訴えを提起したときは、債権者は遅滞なく債務者へ訴訟告知をしなければなりません(民法423条の6)。代位訴訟の判決の効力が債務者にも及ぶため、債務者が訴訟に関与する機会を保障するためです。

代位行使できる金額の上限

被代位権利が分割できる場合、請求できるのは原則として債権者自身の債権額までです(民法423条の2)。例えば、債権者の債権が80万円、債務者の第三債務者に対する売掛金が300万円であれば、債権者は原則として80万円の範囲で代位行使します。

第三債務者に直接支払いや引渡しを求める場合

直接請求が認められるもの

代位行使の効果は本来、債務者に帰属します。しかし、債務者が第三債務者からの受領を拒むと制度の目的を達成できないため、債権者は、第三債務者へ自己に対する金銭の支払いまたは動産の引渡しを求められます(民法423条の3前段)。

ただし、債権者が自己への不動産登記の移転を直接請求することはできません。第三債務者が債権者に金銭を支払い、または動産を引き渡した場合、その限度で被代位権利は消滅します(民法423条の3後段)。

なお、交通事故の被害者が、加害者の加入する任意保険の保険会社に対して債権者代位権を行使し、直接保険金を請求できるかが問題となった事例では、債務者の無資力が必要であるとして、直接請求が否定されました。その後、自動車保険約款の改訂により、直接請求ができるようになりました。

第三債務者が主張できること

債権者が被代位権利を行使した場合、第三債務者は、債務者に対して主張できる抗弁を債権者にも主張できます。例えば、第三債務者が債務者に対して同時履行の抗弁権を有するときは、債権者に対してもその抗弁を主張できます。

債務者による取立てなど

債権者が被代位権利を行使した場合でも、債務者が自ら取立てその他の処分をすることは妨げられません。また、第三債務者が債務者に対して履行することも妨げられません(民法423条の5)。

債権者代位権を行使した場合の効果

債権者代位権を行使しても、その効果は直接債務者に帰属します。そのため、債権者代位権そのものに優先弁済的な効力はありません。

もっとも、債権者が第三者から金銭を受領した場合には、債務者に対する自己の債権と、受領した金銭の引渡債務を相殺することができます。この場合に事実上優先弁済を受けられるのは、債権者代位権の効果ではなく、相殺の効果によるものです。