使用貸借が終了すると、借主は借用物を返還します。その際、借主が後から取り付けた物の撤去や、借主の責任で生じた損傷の修復を求められることがあります。ただし、すべてを取り外さなければならないわけではありません。ここでは、使用貸借終了時の収去義務と原状回復義務を整理します。
使用貸借が終了すると借主は借用物を返還する
使用貸借が終了する主なタイミング
使用貸借は、期間を定めていれば期間満了によって終了します(民法597条1項)。期間の定めがなくても、使用・収益の目的が決まっている場合は、借主がその目的に従った使用・収益を終えた時点で終了します(同条2項)。また、借主が死亡した場合も終了します(同条3項)。
このほか、貸主または借主による解除によって終了する場合もあります。
終了時に問題となる2つの義務
- 収去義務:借主が後から取り付けた物を取り外す義務
- 原状回復義務:借主の責任で生じた損傷を元に戻す義務
どちらも返還時に問題となりますが、対象が異なる別々の義務です。
収去義務とは?借主が取り付けた物を取り外す義務
収去義務の基本
借主は、借用物を受け取った後に附属させた物があるとき、使用貸借の終了時にそれを取り外す義務を負います(民法599条1項本文)。例えば、無償で借りた倉庫に借主が組み立て式の棚を設置した場合、その棚は原則として撤去して返還します。
収去しなくてもよい場合
ただし、借用物から分離できない物や、分離するために過分な費用がかかる物は、収去義務の対象外です(同項ただし書)。したがって、取り外しができないもの、または撤去費用が著しく大きくなるものまで、当然に撤去しなければならないわけではありません。
借主には収去する権利もある
借主は、借用物に附属させた物を取り外すことができます(民法599条2項)。これは収去権と呼ばれます。収去義務があるかどうかとは別に、借主が自ら取り外せる権利が認められている点に注意しましょう。
原状回復義務とは?借主の責任による損傷を元に戻す義務
原状回復義務の内容
借主は、借用物を受け取った後に生じた損傷について、使用貸借の終了時に原状回復義務を負います(民法599条3項)。ただし、その損傷が借主の責めに帰することのできない事由による場合は、義務を負いません。
つまり、損傷が存在するだけで、直ちに借主が修理費用を負担するわけではありません。損傷の原因や経緯を確認し、借主の責任によるものかを判断します。
収去義務との違い
収去義務は「借主が後から附属させた物の撤去」、原状回復義務は「借用物自体に生じた損傷の修復」です。取り付けた物を外す問題と、壊れた部分を直す問題を分けて考える必要があります。
使用貸借終了時に借主が確認・対応すること
契約終了の根拠と返還時の状態を確認する
- 契約で期間や使用目的を確認する
- 期間満了、目的達成、解除など終了理由を整理する
- 借主が後から附属させた物を確認する
- 損傷の原因が借主の責任によるものかを確認する
収去と原状回復を分けて対応する
取り外し可能な附属物は原則として収去し、分離できない物や過分な費用を要する物は例外に当たるかを確認します。損傷については、借主の責めに帰することができない事由によるものかを確認します。
損害賠償・費用の償還の請求期間にも注意する
契約の本旨に反する使用・収益による損害賠償請求や、借主が支出した費用の償還請求は、貸主が返還を受けた時から1年以内に行う必要があります(民法600条1項)。損害賠償請求権については、返還から1年が経過するまで時効は完成しません(同条2項)。
まとめ
- 使用貸借が終了すると、借主は借用物を返還する。
- 後から附属させた物は、原則として取り外す。
- 分離できない物や過分な費用がかかる物は、収去義務の例外となる。
- 借主の責任による損傷は原状回復が必要だが、責任のない損傷は対象外である。
