内閣総理大臣の異議とは、行政事件訴訟において、内閣総理大臣が理由を示して異議を述べることにより、裁判所による執行停止を妨げ、すでにされた執行停止を取り消させる制度です。行政事件訴訟法27条に定められており、執行停止の前後どちらでも利用できます。
内閣総理大臣の異議とは
行政処分の取消訴訟などでは、原則として、訴訟を起こしただけで処分の効力や執行が止まることはありません。これを「執行不停止の原則」といいます。
もっとも、一定の要件を満たす場合には、裁判所が申立てに基づいて執行停止を決定できます。内閣総理大臣の異議は、この執行停止に対して特別に認められた制度です。行政不服審査法には、内閣総理大臣の異議に関する規定はありません。
執行停止との関係
執行停止には、次の3つがあります。
- 処分の効力の停止
- 処分の執行の停止
- 処分を前提とする手続の続行の停止
執行停止が認められるには、適法な取消訴訟が提起されていること、重大な損害を避けるため緊急の必要があることが必要です。さらに、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがなく、本案について理由がないとみえるときでないことも求められます。
「重大な損害」に当たるかは、損害の回復が困難かどうかを考慮し、損害の性質・程度や処分の内容・性質も勘案して判断されます。また、執行停止は裁判所が自ら始めるものではなく、申立てが必要です。なお、処分の執行や手続の続行を止めれば目的を達成できる場合、処分の効力そのものを停止することはできません。
内閣総理大臣の異議の効果と手続
執行停止の前に異議を述べた場合
内閣総理大臣が理由を付して異議を述べると、裁判所は執行停止をすることができません。
執行停止の後に異議を述べた場合
執行停止の決定がすでに出ていても、内閣総理大臣は異議を述べられます。この場合、裁判所はその執行停止の決定を取り消さなければなりません。つまり、異議には、決定後の執行停止を取り消す効果があります。
決定後の異議は、原則として執行停止を決定した裁判所に述べます。ただし、その決定に対する抗告が抗告裁判所に係属している場合は、抗告裁判所に述べます。
なお、内閣総理大臣が異議を述べたときは、次の通常国会で、その内容を国会に報告しなければなりません。
まとめ
内閣総理大臣の異議とは、行政事件訴訟法27条に基づき、執行停止を妨げたり、すでにされた執行停止を取り消したりする制度です。執行停止の前後を問わず、理由を付して述べることができ、異議があれば裁判所は執行停止をできず、決定後であればその決定を取り消さなければなりません。
