不法行為で慰謝料を請求できるのはどんな場合?財産以外の損害を解説

不法行為による損害賠償には、財産権の侵害による損害だけでなく、財産以外の損害も含まれます。財産権以外の損害に対する賠償金は、一般に慰謝料と呼ばれます。

もっとも、精神的につらい思いをしたというだけで、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。不法行為が成立するための条件を満たす必要があります。ここでは、慰謝料の対象となる利益と、請求に必要な要件を解説します。

不法行為における慰謝料とは

慰謝料は「財産以外の損害」に対する賠償

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為です。不法行為を行った加害者は、被害者に生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。

不法行為は、財産権の侵害に限られません。身体、自由、名誉などを侵害した場合にも成立し、加害者は損害賠償責任を負います(民法710条)。このような財産以外の損害に対する賠償が、一般に慰謝料です。

慰謝料の対象となる主な権利・利益

  • 生命や身体に関する利益
  • 自由に関する利益
  • 名誉に関する利益
  • その他、法律上保護される利益

名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用などの人格的価値について、社会から受ける客観的評価をいいます。その客観的な社会的評価を低下させる行為が、名誉毀損です。

なお、生命を侵害した場合には、被害者の父母、配偶者および子に対しても損害賠償責任が生じます。また、不法行為によって父が死亡した場合などには、胎児にも、その出生を停止条件とする損害賠償請求権が認められます(民法711条、721条)。

慰謝料を請求するために必要な不法行為の成立要件

原則として必要となる5つの要件

民法は過失責任主義を採用しており、他人に損害を与えても、直ちに不法行為が成立するわけではありません。慰謝料を請求するには、原則として次の5つの要件を満たす必要があります。

  1. 損害が発生していること:財産以外の損害として、精神的苦痛などが生じていること。
  2. 故意または過失があること:わざと行った場合だけでなく、必要な注意を怠った場合も含まれます。不可抗力による損害など、故意・過失がない場合は、原則として不法行為は成立しません。
  3. 責任能力があること:自分の行為の法律上の責任を認識できる知能をいいます。責任能力は加害者ごとに個別に判断されますが、およそ12歳前後から認められると解されています。未成年者は、責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは賠償責任を負いません。また、精神上の障害により責任を弁識する能力を欠く状態にある間に損害を加えた者も、原則として賠償責任を負いません。ただし、故意または過失によって一時的にその状態を招いた場合は別です。
  4. 行為が違法であること:他人の権利または法律上保護される利益を侵害していることが必要です。ただし、正当防衛や緊急避難にあたる場合は、違法性が否定されることがあります(民法720条)。
  5. 行為と損害に因果関係があること:加害行為の結果として、相当な損害が発生したといえることです。これを相当因果関係といい、訴訟では被害者側が立証する必要があります。

「精神的苦痛がある」だけでは請求できない

相手の言動が不快だったというだけでは、慰謝料請求が認められるとは限りません。精神的苦痛に加えて、相手の故意または過失、違法な権利侵害、損害との相当因果関係など、不法行為の成立要件を満たす必要があります。

たとえば、相手の行為によって名誉や身体などの法律上保護される利益が侵害され、その結果として精神的苦痛が生じたと説明できる場合に、慰謝料請求を検討できます。

不法行為で被害者が死亡した場合

不法行為が原因で被害者が死亡した場合、被害者の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思表示をしていなくても相続の対象となります。

また、民法711条に定められた者以外でも、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視できる身分関係があり、被害者の死亡によって甚大な精神的苦痛を受けた場合には、固有の慰謝料を請求できることがあります。