景観利益は法律上保護される
景観利益とは
景観利益とは、良好な景観に近接する地域内に居住する人が、その景観の恵沢を享受する利益をいいます。
最高裁判所は、良好な景観の恵沢を享受する利益について、法律上保護に値する利益と判断しています。したがって、景観利益への侵害は、民法709条の不法行為における侵害対象となり得ます。
景観が損なわれただけで直ちに違法になるわけではない
もっとも、景観利益が法律上保護に値することと、景観に影響を与える行為がすべて違法になることは別問題です。不法行為が成立するには、景観利益への侵害が違法と評価されなければなりません。
景観侵害が不法行為になるための条件
不法行為の基本的な成立要件
景観侵害について、民法709条に基づく不法行為が成立するには、原則として次の要件が必要です。
- 損害が発生していること
- 行為者に故意または過失があること
- 行為者に責任能力があること
- 違法な行為であること
- 行為と損害との間に因果関係があること
景観に関する問題では、特に、景観利益という法律上保護される利益が侵害されたか、さらにその侵害が違法といえるかが重要です。故意や過失がなく、不可抗力によって景観に影響が生じた場合は、原則として不法行為は成立しません。
社会的に容認された行為としての相当性を欠くこと
景観の恵沢を享受する利益への侵害が違法と評価されるには、少なくとも、侵害行為が次のようなものであり、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが必要です。
- 刑罰法規や行政法規の規制に違反している
- 公序良俗に反している
- 権利の濫用に当たる
そのため、景観に影響を与える行為があったというだけで、直ちに違法とはいえません。侵害行為の態様や程度が、社会的に容認された行為としての相当性を欠くかどうかが判断されます。
最高裁判例から見る景観侵害の判断
最高裁判所の判断
最高裁平成18年3月30日判決は、良好な景観に近接する地域内に居住する人が有する、その景観の恵沢を享受する利益について、法律上保護に値するものと判断しました。
一方で、不法行為が成立するには、少なくとも、侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反する、公序良俗違反や権利の濫用に該当するなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠く必要があるとしています。
まとめ
景観利益は、良好な景観に近接する地域内に居住する人が有する利益として、法律上保護に値します。ただし、景観に影響が生じただけで直ちに不法行為が成立するわけではありません。
不法行為と認められるには、侵害行為の態様や程度が社会的に容認された行為としての相当性を欠き、違法な侵害と評価できることが必要です。加えて、損害、故意・過失、責任能力、因果関係など、不法行為の基本要件も満たさなければなりません。
