詐害行為取消権とは、債務者が財産を減らして債権者からの回収を困難にした場合に、その行為を取り消し、財産の返還や価額の償還を求める制度です。
内容証明郵便などで通知するだけでは足りず、受益者または転得者を被告として訴訟を提起する必要があります。ここでは、行使の条件、裁判手続、被告、請求できる内容を説明します。
詐害行為取消権を行使できる条件
基本的な要件
主な要件は、次のとおりです。
- 債務者が、贈与・売却・担保提供など財産権を目的とする行為をしたこと
- その結果、債務者の財産が減少し、債権者が十分な弁済を受けられない無資力の状態になったこと
- 債務者が、債権者を害することを知って行為をしたこと
- 債権者が、原則として金銭債権を有し、その債権の発生原因が詐害行為より前に存在すること
- その債権が強制執行によって実現できること
- 受益者(行為の相手方)が、債権者を害する事実を知っていたこと
債務者に、債権者を害する積極的な目的まで必要ではありません。無資力になったことや債務者の詐害意思は、原則として債権者が立証します。特定物の引渡しを求める債権でも、最終的に損害賠償請求へ変わり得る場合は、例外的に対象となることがあります。
財産が受益者から転得者、さらに再転得者へ移転している場合は、受益者から最終の取得者まで、各人が悪意でなければなりません。受益者が善意だったことは受益者側が、転得者の悪意は債権者側が立証します。
財産処分や担保提供の特則
相当な対価を受けた財産処分は、原則として詐害行為ではありません。ただし、財産の種類を変えることで隠匿などの危険が現実に生じ、債務者が対価を隠匿する意思を持ち、かつ受益者もその意思を知っていた場合は、取消しの対象となります。
既存の債務に対する担保提供や弁済も、原則として詐害行為とはいえません。しかし、債務者が支払不能の時期に、債務者と受益者が他の債権者を害する意図で通謀していた場合は例外です。債務者の義務に属しない担保提供などは、支払不能になる前30日以内に行われ、同様の通謀がある場合に限り取消しの対象となります。過大な代物弁済では、消滅した債務額を超える部分について取消しを求められることがあります。
詐害行為取消権の裁判手続と被告
必ず裁判所に請求する
詐害行為取消権は、裁判外の意思表示だけでは行使できません。債権者が自分の名で、詐害行為取消請求訴訟を提起します。訴えを起こした後は、債務者に対して遅滞なく訴訟告知を行い、訴訟に参加する機会を与えます。
誰を被告にするのか
被告は、債務者ではありません。債務者から直接財産を取得した受益者を相手にする場合は受益者を、転得者に財産が移った場合は転得者を被告とします。
請求できる内容と範囲
請求では、詐害行為の取消しと、移転した財産の返還を求めます。返還が困難な場合は、財産の価額を償還するよう請求できます。金銭の支払いや動産の引渡しであれば、債務者ではなく債権者へ直接支払う・引き渡すよう求めることも可能です。
取消しの範囲は、原則として自分の債権額が上限です。目的が可分であれば、自己の債権額の限度で請求します。ただし、目的が不可分である場合は、債権額を超えて全部の取消しが認められることがあります。
詐害行為取消権の行使期間
訴訟は、債権者が債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを知った時から2年を経過すると、提起できなくなります。また、詐害行為の時から10年を経過した場合も、提起できなくなります。
