行政行為の取消権者と撤回権者とは?処分庁・審査庁・裁判所の権限を解説

行政行為の効力を消滅させる方法には、「取消し」と「撤回」があります。両者は似ていますが、理由となる事情や、効力がなくなる時期が異なります。また、誰が取消しや撤回を行えるのかも違います。

この記事では、行政行為の取消権者・撤回権者について、処分庁、審査庁、裁判所の権限を整理します。

行政行為の「取消し」と「撤回」は何が違うのか

取消しは、成立時から存在する瑕疵を理由に効力を消滅させる

取消しは、行政行為がされた時点で、法律違反などの瑕疵があった場合に行われます。取消しがされると、原則として、その行政行為は成立した時点にさかのぼって効力を失います。

取消しには、行政庁が自ら行う職権取消しと、審査請求や取消訴訟を通じて行われる争訟取消しがあります。職権取消しは、法律上の根拠がなくても認められると解されています。

撤回は、成立後に生じた事情を理由に将来の効力を消滅させる

撤回は、行政行為がされた時点では適法・有効だったものの、その後の事情により、将来に向けて効力を消滅させるものです。撤回されるまでは、行政行為の効力は維持されます。

撤回は、原則として法律上の根拠がなくても認められます。ただし、授益的行政行為については、公益上の必要性などによる制約があります。

なお、法令上「取消し」と書かれていても、実質的には撤回を意味する場合があります。

行政行為の取消権者は誰か

処分庁

処分庁とは、行政行為をした行政庁です。処分庁は、自らの行政行為に違法・不当な点があると認めた場合、職権で取り消すことができます。

もっとも、営業許可など相手方に利益を与える授益的行政行為を取り消すと、相手方に不利益が生じます。そのため、法的安定性や相手方の不利益を考慮し、公益上の必要性などが求められる場合があります。

審査庁

審査庁は、行政不服審査法に基づく審査請求について判断する行政庁です。審査請求に理由があると認めた場合、対象となった行政行為を取り消すことができます。これは、処分庁による職権取消しではなく、争訟取消しです。

裁判所

裁判所は、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟で、行政行為を取り消すことができます。裁判所による取消しも争訟取消しにあたり、成立時から瑕疵のある行政行為の効力を否定するものです。

上級行政庁

処分庁を監督する上級行政庁が、法律上の明確な根拠なく下級行政庁の処分を取り消せるかについては、学説上の争いがあります。そのため、取消権者に上級行政庁を含めるかは見解が分かれています。

行政行為の撤回権者は誰か

撤回権者は原則として処分庁のみ

撤回は、行政行為の成立後に生じた事情を踏まえ、将来に向かって効力を消滅させるものです。そのため、撤回できるのは行政行為をした処分庁に限られます。

審査庁や裁判所は、撤回を行うのではなく、審査請求や取消訴訟を通じて行政行為の取消しを行う立場です。

授益的行政行為の撤回には制約がある

許可や指定などの授益的行政行為を撤回すると、相手方に不利益が生じます。そのため、撤回にあたっては、公益上の必要性が求められます。

また、授益的行政行為の職権取消し・撤回は、相手方に不利益を与える処分にあたるため、原則として意見陳述の手続が必要です。

取消権者と撤回権者の違いまとめ

  • 取消権者:処分庁、審査庁、裁判所。上級行政庁については見解に争いがあります。
  • 撤回権者:処分庁のみです。
  • 取消し:成立時から存在する瑕疵を理由とし、原則として成立時にさかのぼって効力を消滅させます。
  • 撤回:成立後の事情を理由とし、撤回後に向かって効力を消滅させます。

ただし、授益的行政行為の取消しや撤回には、相手方の不利益、法的安定性、公益上の必要性などによる制約があります。