狭義の訴えの利益とは?取消訴訟で認められる条件をわかりやすく解説

狭義の訴えの利益とは、原告が取消訴訟に勝訴することにより、その権利利益を客観的に回復できる利益をいいます。

取消訴訟の係属中に処分の効果がなくなった場合などには、訴訟を続ける利益があるかが問題になります。ただし、処分の効果がなくなったからといって、常に狭義の訴えの利益が失われるわけではありません。

狭義の訴えの利益とは

取消訴訟の勝訴によって権利・利益を回復できる利益

取消判決によって処分の効力を排除することが、原告の権利・利益を回復するために必要な手段であれば、狭義の訴えの利益が認められます。

一方、取消判決を得ても権利・利益を回復できない場合には、狭義の訴えの利益は認められません。

「狭義」とは何を意味するか

ここでいう「狭義」は、取消訴訟によって原告の権利・利益を回復できるかという、訴訟を維持する実益に関する要件を指します。被告適格、管轄、出訴期間などの要件とは区別して考えます。

狭義の訴えの利益が認められる条件

取消しによって法律上の不利益を解消できること

処分が取り消されることにより、原告の権利・利益を回復できる場合には、狭義の訴えの利益が認められます。処分の効力を排除することが、権利・利益の回復に必要な手段であるかが判断のポイントです。

処分の効果がなくなった後も法律上の利益が残っていること

行政事件訴訟法9条1項の括弧書きは、期間の経過その他の理由により処分や裁決の効果がなくなった後でも、取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含むと定めています。

そのため、処分の効果がなくなった場合でも、取消しによって回復すべき法律上の利益が残っていれば、狭義の訴えの利益が認められることがあります。

処分の効果がなくなった場合の裁判例

訴えの利益が認められた裁判例

公務員が免職処分を受けた後、公職への立候補により元の地位を回復できなくなった場合でも、免職処分が残ることで、違法な免職処分がなければ有するはずだった給料請求権などの権利・利益が害されているとして、訴えの利益が認められました(最大判昭40・4・28)。

また、運転免許の有効期限が切れた後でも訴えの利益を認めた例(最判昭40・8・2)や、土地改良事業の工事・換地処分が完了した後も訴えの利益を認めた例があります(最判平4・1・24)。

訴えの利益が認められなかった裁判例

一方、特定日の公園使用許可を争っている間にその日が経過した場合には、訴えの利益が否定されています(最大判昭28・12・23)。

建築確認の取消訴訟では、建築確認が建築基準法に違反する建築物の建築を未然に防ぐことを目的としているため、建築工事が完了すると、建築確認を取り消す原告の利益が失われ、訴えの利益が認められません(最判昭59・10・26)。

また、保険医指定制度が廃止された場合(最判昭41・11・15)や、市街化区域内の土地について開発行為に関する工事が完了した場合(最判平5・9・10)にも、訴えの利益が認められませんでした。

ただし、市街化調整区域内の土地を開発区域とする開発許可については、工事が完了し、検査済証が交付された後でも、開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われないとした判例があります(最判平27・12・14)。

判断のポイント

  • 処分・裁決の効果がなくなったか
  • 取消判決によって権利・利益を回復できるか
  • 取消しが権利・利益の回復に必要な手段か
  • 処分後の事情により、回復すべき法律上の利益が失われていないか

まとめ:狭義の訴えの利益は「取消しで法律上の利益を回復できるか」で判断する

狭義の訴えの利益とは、取消訴訟に勝訴することで、原告の権利・利益を客観的に回復できる利益です。処分の効果がなくなった後でも、取消しによって回復すべき法律上の利益が残っていれば、認められる可能性があります。

一方、取消判決を得ても権利・利益を回復できない場合には、訴えの利益は認められません。最終的には、処分後の事情も踏まえ、個々の事案ごとに判断されます。