取消訴訟の審理の流れとは?要件審理と本案審理の違いを解説

取消訴訟の審理は「要件審理」から「本案審理」へ進む

取消訴訟が提起されると、裁判所はまず、その訴えが訴訟要件を備えているかを審理します。この段階が要件審理です。

要件審理が終了し、訴訟要件を満たす適法な訴えであると判断されると、裁判所は次に本案審理を行います。訴訟要件を欠く場合は、原則として処分や裁決の違法性を判断する本案審理には進みません。

区分 審理する内容 判断の位置づけ
要件審理 取消訴訟として審理できるか 本案審理に進めるか
本案審理 処分や裁決に違法があるか 取消しを認めるか

要件審理では、取消訴訟を審理できるか確認する

要件審理は、訴えが法律上必要な条件を備えているかを確認する手続です。ここで問題となるのは、処分が違法かどうかではなく、裁判所がその取消訴訟を適法な訴えとして取り扱えるかどうかです。

つまり、要件審理は審理の入口に関する判断であり、本案審理は取消しを求める理由の中身に関する判断です。

本案審理では、行政処分や裁決の違法性を審理する

民事訴訟の手続を基本に審理が進む

行政事件訴訟法だけで本案審理のすべてが定められているわけではありません。規定がない部分は、行政事件訴訟の性質に反しない限り、民事訴訟の例によります(行政事件訴訟法7条)。そのため、審理の多くは民事訴訟と同様の手続で進みます。

当事者の主張・立証を基本に判断される

取消訴訟では、原告と被告に多くの権能を認める当事者主義が採用されています。当事者主義は、当事者の主張や立証に拘束され、その範囲内で判決する弁論主義と、訴えの提起・終了や訴訟の対象を当事者が決める処分権主義を要素とします。

ただし、行政処分は公益への影響が大きいため、当事者が提出した証拠だけでは十分な心証を得られない場合、裁判所は職権で証拠調べをすることができます(行政事件訴訟法24条)。もっとも、審査請求のように裁判所が職権で事実を探知することまで認められるわけではありません。

裁判所による資料提出の求めなどが行われることがある

裁判所は、訴訟関係を明確にするため、被告である国や公共団体に所属する行政庁に対し、処分や裁決の内容、根拠となる法令の条項、原因となる事実その他の理由を明らかにする資料であって、当該行政庁が保有するものの全部または一部の提出を求めることなどができます。これは取消訴訟における釈明処分の特則です(行政事件訴訟法23条の2)。

第三者や関係する行政庁が訴訟に参加することがある

裁判所は、訴訟の結果によって権利を害される第三者があるときは、当事者や第三者の申立て、または職権で、その第三者を訴訟に参加させることができます。また、処分や裁決をした行政庁以外の行政庁も、必要な場合には訴訟に参加することがあります(行政事件訴訟法22条、23条)。

本案審理で主張できる違法事由には制限がある

原告適格が認められていても、原告自身の法律上の利益に関係しない違法を理由に取消しを求めることはできません(行政事件訴訟法10条1項)。

また、違法性を判断する基準時について、判例・通説は、原則として行政処分が行われた時点の法令や事実によるとしています。審査請求が行われた場合は、原則として裁決時が基準となります。

まとめ

取消訴訟は、まず要件審理で適法な訴えかを確認し、訴訟要件を満たせば本案審理へ進みます。要件審理は「審理できるか」、本案審理は「処分や裁決に違法があるか」を判断する段階です。本案審理は民事訴訟の手続を基本としつつ、職権証拠調べや行政庁への資料提出の仕組みが設けられています。