国会議員の立法行為は、原則として国家賠償法上「違法」にならない
結論からいうと、国会議員が法律を制定する行為や、必要な法律を制定しない立法不作為は、原則として国家賠償法1条1項上の「違法」には当たりません。
国家賠償法1条1項は、公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人へ損害を与えたとき、国や公共団体が賠償責任を負うと定めています。立法行為については、違法性だけでなく、故意・過失、損害などの要件も満たす必要があります。
もっとも、法律の内容が憲法に違反することと、国会議員の立法行為が国家賠償法上違法であることは、同じ問題ではありません。
立法の違憲性と、国家賠償法上の違法性は別に判断される
法律の内容が憲法の規定に違反する可能性があっても、それだけで直ちに損害賠償の対象になるわけではありません。国家賠償法上の違法性は、国会議員が立法過程で、個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかによって判断されます。
国会議員は、立法について原則として国民全体に対する政治的責任を負います。そのため、立法の内容が憲法に違反する可能性があることだけで、国家賠償法上違法と評価されるわけではありません。
立法不作為が国家賠償法上違法になる例外的な場合
立法不作為とは
立法不作為とは、国会が必要とされる法律を制定しないことです。立法行為には、法律を制定する場合だけでなく、法律を制定しない場合も含まれます。ただし、制定されなかったという事実だけで違法になるわけではありません。
判例が示した例外
最高裁判所は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず、国会があえてその立法を行う場合のような、容易には想定しにくい例外的ケースを除き、国会議員の立法行為は国家賠償法1条1項上違法の評価を受けないと判示しました。
立法不作為についても、個別の国民に対する職務上の法的義務に違反したといえるかが重要です。
- 立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているか
- 個別の国民に対する法的義務違反があるか
- 実際に損害が発生しているか
- 故意または過失など、国家賠償法1条1項の要件を満たすか
立法行為・立法不作為に関する最高裁判例
最判昭和60年11月21日
最高裁判所は、国会議員の立法行為には立法不作為も含まれるとしました。そして、法律の内容が違憲かどうかと、立法行為が国家賠償法上違法かどうかは区別されると判示しています。
原則として、国会議員は個別の国民の権利に対応した法的義務を負うのではなく、国民全体に対する政治的責任を負います。そのため、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うような例外的場合を除き、立法行為は国家賠償法1条1項上違法とは評価されません。
判例から分かること
立法の内容が憲法に違反する可能性があることと、国家賠償法上違法と評価されることは同じではありません。立法行為や立法不作為について賠償を求めるには、個別の法的義務、故意・過失、損害など、国家賠償法1条1項の要件を満たす必要があります。
