基本的人権と公共の福祉の関係とは?4つの学説をわかりやすく解説

基本的人権と公共の福祉の関係とは

公共の福祉とは、人権相互の衝突を調整する原理

基本的人権は、憲法上、侵すことのできない権利とされています。ただし、すべての人の権利を無制限に認めると、ある人の自由と別の人の自由が衝突することがあります。

たとえば、ヘビースモーカーの人と煙草が嫌いな人が同じ場所に居合わせた場合、煙草を吸う自由と煙草を吸わない自由が衝突します。このような場合に、双方の人権を調整する公平の原理が公共の福祉です。

公共の福祉は、単なる個人的な利益ではなく、人権相互の矛盾・衝突を調整する公共的・社会的な利益を意味します。

憲法における公共の福祉の規定

  • 憲法12条:国民は、公共の福祉のために基本的人権を利用する責任を負う
  • 憲法13条:生命・自由・幸福追求に対する権利は、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする
  • 憲法22条1項:居住・移転・職業選択の自由について、公共の福祉による制約を定める
  • 憲法29条2項:財産権について、公共の福祉による制約を定める

人権が公共の福祉によって制約を受けることについては、主に次の4つの学説があります。

基本的人権と公共の福祉の関係をめぐる4つの学説

①一元的外在制約説

すべての人権は、公共の福祉による制約を受けると考える説です。公共の福祉を人権の外側にある一般的な制約原理と位置づけ、憲法12条・13条の公共の福祉によって人権を制限できるとします。

この説には、法律による人権制限が容易になるという批判があります。

②内在・外在二元的制約説

権利の種類によって、制約の根拠を分ける説です。経済的自由権や社会権には公共の福祉による外在的な制約を認め、それ以外の自由権は、人権に内在する制約に限って制限できると考えます。

この説は、自由権と社会権を明確に区別しにくいことや、憲法13条を訓示的規定とすると、同条を根拠とする新しい人権に対応しにくいことが批判されています。

③一元的内在制約説

公共の福祉は、すべての人権に内在する、人権相互の矛盾・衝突を調整する実質的公平の原理だと考える説です。権利の性質に応じて制約の程度が異なり、自由権には必要最小限の自由国家的公共の福祉、社会権には必要な限度の社会国家的公共の福祉による制約が認められるとします。

一方で、「必要最小限」や「必要な限度」という基準が抽象的で、実際には一元的外在制約説と大きく変わらないという批判があります。

④人権の性質や規制目的を考慮する考え方

この考え方は、③のように公共の福祉を人権相互の矛盾・衝突を調整する実質的公平の原理と捉えます。そのうえで、人権の制約が正当化されるかどうかは、公共の福祉だけでなく、人権の性質や規制の目的を考慮して判断されなければならないとします。

現在の考え方からみた基本的人権と公共の福祉の関係

現在は、憲法13条を単なる訓示的規定ではなく、法的意味を持つ規定と考えるのが主流です。そのため、同条の公共の福祉は、人権を制約する憲法上の根拠となります。

ただし、公共の福祉の具体的内容を一概に定義することはできません。人権の制約が正当化されるかどうかは、人権の性質や規制の目的を踏まえて判断されます。