成年後見制度には、成年被後見人・被保佐人・被補助人の3種類があります。いずれも事理を弁識する能力が十分でない人を保護する制度ですが、同じ人が複数の身分を同時に持てるのか、疑問に感じることもあるでしょう。
結論として、成年被後見人・被保佐人・被補助人が同時に成立することはありません。以下では、3つの身分の違いと、後見開始・保佐開始・補助開始の審判相互の関係を説明します。
成年被後見人・被保佐人・被補助人は同時になれない
同じ人が複数の身分を持つことはできない
成年被後見人、被保佐人、被補助人は、いずれか1つの身分に整理されます。すでにいずれかの開始審判を受けている人について、別の類型の開始審判をする場合には、先にある審判を取り消す必要があります。
したがって、保佐開始の審判を受けていた人が、後に後見開始の審判を受けたとしても、被保佐人と成年被後見人の身分を同時に持つことにはなりません。
3つの身分の違いは事理を弁識する能力の程度にある
- 成年被後見人:精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある人
- 被保佐人:精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分な人
- 被補助人:精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分な人
ただし、このような状態にあるだけで当然に各身分になるわけではありません。家庭裁判所による、それぞれの開始審判が必要です。
後見・保佐・補助の開始審判をするときの関係
後見開始の審判をする場合
本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、保佐開始または補助開始の審判を取り消さなければなりません(民法19条1項)。
保佐開始の審判をする場合
本人が成年被後見人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、後見開始または補助開始の審判を取り消さなければなりません(民法19条2項)。
補助開始の審判をする場合
本人が成年被後見人または被保佐人であるときは、家庭裁判所は、後見開始または保佐開始の審判を取り消さなければなりません(民法19条2項)。
審判が変更されるときの考え方
3つの制度は、本人の事理を弁識する能力の程度に応じて、いずれか1つを適用する仕組みです。以前の開始審判を残したまま、新しい類型の審判を重ねるのではありません。
重要なのは、新たな類型の開始審判をする際に、家庭裁判所が既存の開始審判を取り消して関係を整理する点です。
まとめ
- 成年被後見人・被保佐人・被補助人は同時になれない
- 後見開始では、既存の保佐開始・補助開始の審判を取り消す
- 保佐開始では、既存の後見開始・補助開始の審判を取り消す
- 補助開始では、既存の後見開始・保佐開始の審判を取り消す
このように、3つの身分は併存せず、家庭裁判所の審判によっていずれか1つに整理されます。
