時効の効力とは?起算日にさかのぼる遡及効をわかりやすく解説

「時効の効力は起算日にさかのぼる」とは、時効が完成した日からではなく、時効期間の計算を始めた日から、権利を取得または消滅したものとして扱うという意味です。ただし、時効が完成しただけで直ちに時効の利益を受けられるわけではなく、援用が必要です。この記事では、取得時効と消滅時効の遡及効、そして時効の援用との関係を説明します。

時効の効力に認められる「遡及効」とは

遡及効の意味

民法144条は、時効の効力がその起算日にさかのぼると定めています。つまり、一定期間が経過した「時効完成日」に効力が生じるのではなく、時効が完成し、援用された場合には、起算日にさかのぼって効力が生じます。これは、起算日から時効完成日までの法律関係を簡明に処理するための仕組みです。

「時効の完成日」と「効力が生じる基準日」の違い

  • 起算日:時効期間の計算を始める日
  • 時効完成日:定められた期間が経過した日

時効が完成しても、それだけで時効の利益が確定するわけではありません。時効の利益を受ける者が援用すると、起算日にさかのぼって時効の効力が生じます。

取得時効では、起算日から権利を取得したことになる

取得時効では、占有を始めた時、または財産権の行使を始めた時が起算日となります。必要な期間が経過して時効が完成し、援用されると、その時点で初めて所有権を得るのではなく、起算日にさかのぼって所有権などを取得したものとして扱われます。

たとえば、Bが他人の土地を所有する意思で、平穏かつ公然に長期間使用し、取得時効が完成したとします。この場合、Bは時効完成日から所有者になるのではなく、占有を始めた起算日から所有権を取得したものと扱われます。起算日から完成日までの法律関係を、所有者として整理しやすくするためです。

土地の時効取得では、起算日から時効完成時までに生じた果実も、遡及効により時効取得者に帰属します。

消滅時効では、起算日に権利が消滅したことになる

消滅時効の起算日は、原則として次のいずれかです。

  • 権利を行使できることを知った時
  • 権利を行使できる時

消滅時効が完成し、援用されると、債権などは完成日に消滅するのではなく、起算日にさかのぼって存在しなかったことになります。たとえば、工事代金の請求権について、法律上請求できる日から時効期間が進行した場合、時効の利益を受けると、その請求権は起算日にさかのぼって消滅したことになります。ただし、具体的な起算日は権利の種類や契約内容によって異なります。

遡及効が生じるために必要な「時効の援用」

時効期間が経過しただけで、直ちに時効の利益を受けられるわけではありません。時効の利益を受ける者が、時効の利益を受ける意思を表示する援用をする必要があります。

裁判では、当事者が時効を援用しなければ、裁判所が時効の完成を前提に判断することはできません。時効を援用するかどうかは、時効の利益を受ける者の意思に委ねられているためです。援用を停止条件として、取得時効・消滅時効の効力が起算日にさかのぼって生じます。

まとめ

時効の効力には、起算日にさかのぼる遡及効があります。取得時効では占有や財産権の行使を始めた時から権利を取得し、消滅時効では権利を行使できることを知った時または権利を行使できる時から権利が消滅したものとして扱われます。

ただし、時効が完成しただけでは足りず、時効の利益を受けるには援用が必要です。遡及効は、起算日から時効完成日までの法律関係を簡明に処理するために認められています。