取得時効における占有の承継とは?前主の占有や瑕疵の引継ぎを解説

取得時効では、占有権の譲渡によって占有者が変わっても、後の占有者が前の占有者(前主)の占有期間を引き継げます。これを「占有の承継」といいます。

取得時効における「占有の承継」とは

取得時効は、所有の意思をもって、平穏かつ公然に他人の物を占有することが基本的な要件です。20年間占有すると長期取得時効が成立し、占有開始時に善意・無過失であれば10年間で短期取得時効が成立します。

占有権の譲渡によって占有者が交代したとき、民法187条1項は、後の占有者に次の選択を認めています。

  • 自分が占有を始めた時からの占有だけを主張する
  • 自分の占有に前主の占有を加えて主張する

つまり、前主の占有を必ず引き継がなければならないわけではありません。どちらを主張するかによって、善意・無過失などの扱いも変わります。

前主の占有を引き継ぐ場合と、自分の占有だけを主張する場合

自分の占有だけを主張する場合

前主の期間を使わず、自分の占有期間だけで時効を主張できます。この場合、期間は自分が占有を始めた時点から計算します。前主が悪意だったとしても、その事情を引き継ぎません。ただし、10年間の短期取得時効を主張するには、自分の占有開始時に善意・無過失であることが必要です。

前主の占有を加えて主張する場合

前主の期間と自分の期間を合算できるため、必要な占有期間を満たしやすくなります。しかし、期間だけを都合よく利用できるわけではありません。民法187条2項により、前主の占有にあった瑕疵も引き継ぎます。

たとえば、Aが他人の土地を悪意で8年間占有した後、Bがその土地を譲り受けて2年間占有したとします。BはAの8年間を加えて10年間の占有を主張できますが、Aの悪意も引き継ぐため、短期取得時効は主張できません。

前主の占有の「瑕疵」はどのように引き継がれるか

前主の瑕疵を引き継ぐ原則

瑕疵とは、ここでは主に、占有開始時の善意・悪意や、過失の有無を指します。前主が悪意または有過失で占有を始めていた場合、その占有を加えて主張すると、後の占有者もその事情を前提にすることになります。そのため、短期取得時効を主張できず、20年間の長期取得時効によることになります。

善意・無過失の判断時点

短期取得時効の善意・無過失は、現在の占有者だけを見て判断するのではありません。前主の占有を加える場合は、前主が占有を始めた時点で判断されます。

たとえば、Aが善意・無過失で占有を始め、その後、土地が他人のものであることを知っているBに占有を移したとします。この場合でも、Aの占有開始時に善意・無過失であれば、BはAの占有を加えて短期取得時効を主張できます。反対に、Aが悪意または有過失で始めた占有をBが加えると、B自身が事情を知らなくても、短期取得時効を主張できません。

したがって、占有の承継では「期間」と「占有の状態」を切り離して考えないことが重要です。