不動産を長期間占有して取得時効が完成する前に、元の所有者がその不動産を第三者へ売却することがあります。この場合、時効取得者は、登記がなくても第三者に時効取得を主張できるのでしょうか。
結論は、第三者が時効完成前に不動産を取得していたなら、時効取得者は原則として登記なく対抗できます。一方、第三者が時効完成後に取得した場合は、原則として時効取得者側にも登記が必要です。
取得時効完成前に取得した第三者には、登記なく対抗できる
時効完成前の第三者は当事者の関係になる
取得時効とは、所有の意思をもって一定期間、不動産を占有することなどにより、その所有権を取得する制度です。たとえば、占有を始めた時点で善意かつ無過失であれば、10年間の占有によって時効取得が成立する場合があります。
この時効が完成する前に、元の所有者が土地を第三者へ売却したとします。この第三者は、占有者との関係では当事者の関係に立つため、時効取得者は、第三者に所有権移転登記がなくても、時効取得を主張できます。
第三者の登記が時効完成後でも結論は変わらない
重要なのは、第三者が登記をした時期ではなく、不動産を取得した時期です。
たとえば、土地を占有していた人の時効完成が、占有開始から10年後だとします。占有開始から6年目に元の所有者が土地を買主へ売却し、買主が登記をしたのが11年目であっても、買主が取得したのは時効完成前です。この場合、時効取得者は、買主に対して登記なく時効取得を主張できます。
取得時効完成後に取得した第三者には、原則として登記が必要
これに対し、時効完成後に元の所有者から不動産を取得し、登記を備えた第三者に対しては、時効取得者は原則として登記がなければ対抗できません。
この場合は、同じ不動産について、元の所有者から時効取得者と第三者へ二重に権利が移った場合と同じように扱われます。したがって、時効取得者が第三者に優先するには、原則として先に登記を備える必要があります。
時効完成後でも登記なく対抗できる例外
その後も占有を続け、さらに時効期間が経過した場合
時効完成後に第三者が登記をしても、占有者がその後も占有を続け、さらに取得時効に必要な期間が経過することがあります。この場合、占有者がその後の時効を援用すれば、第三者に対して登記なく時効取得を主張できます。
第三者が背信的悪意者にあたる場合
時効完成後の第三者が、単に占有者の存在を知っていただけでは、直ちに背信的悪意者とはいえません。長年にわたる占有を認識しながら、登記がないことを利用して権利を主張するのが信義則に反する事情が必要です。この場合は例外的に、登記なく対抗できることがあります。
抵当権が設定された場合
時効完成後に抵当権の登記がされても、占有者がその後も必要な期間、占有を続けて時効を援用した場合、原則として抵当権が消滅します。ただし、占有者が抵当権の存在を容認していたなど、消滅を妨げる特段の事情がある場合は別です。
まとめ
- 第三者が時効完成前に不動産を取得していれば、登記が時効完成後でも、時効取得者は登記なく対抗できる
- 第三者が時効完成後に取得した場合は、原則として時効取得者にも登記が必要
- その後も必要な期間占有を続けて時効を援用した場合や、第三者が背信的悪意者にあたる場合などは、登記なく対抗できることがある
