根抵当権とは、継続的な取引によって発生する複数の債権を、あらかじめ定めた極度額まで担保するための特別な抵当権です。通常の抵当権が特定の債権を担保するのに対し、根抵当権は一定の範囲に属する不特定の債権を担保します。
根抵当権とは
根抵当権の意味
根抵当権を設定すると、対象となる継続的な取引から新しい債権が発生するたびに、個別の抵当権を設定しなくても、契約で定めた範囲内で担保できます。たとえば、銀行が同一企業に対して継続的に融資する場合などに利用されます。
根抵当権で担保される債権の範囲
根抵当権の被担保債権の範囲は、設定契約で定めなければなりません。担保できるのは、主に次のような債権です。
- 債務者の特定の継続的取引契約などによって生じる債権(銀行取引、売買取引など)
- 特定の原因に基づき、債務者との間に継続して発生する債権(工場排水による損害賠償請求権など)
- 手形債権、小切手債権、電子記録債権
したがって、根抵当権を設定すれば、どのような債権でも無制限に担保できるわけではありません。
根抵当権と抵当権の違い
担保する債権の違い
| 項目 | 抵当権 | 根抵当権 |
|---|---|---|
| 担保する債権 | 特定の債権 | 一定の範囲に属する不特定の債権 |
| 利用場面 | 個別の貸付けなど | 継続的な借入れ・取引など |
| 担保の上限 | 担保する債権を基準に決まる | 契約で定めた極度額 |
抵当権は特定の債権を担保するのに対し、根抵当権は、一定の範囲に属する複数の債権を担保します。そのため、継続的な取引では、個別に抵当権を設定する手間を抑えられます。
根抵当権に設定される「極度額」
極度額とは、根抵当権を設定した不動産が担保すべき限度額です。根抵当権者は、確定した元本に加え、利息などの定期金や債務不履行による損害賠償についても、極度額を限度として根抵当権を行使できます。
根抵当権の仕組み
設定時に定める事項
根抵当権設定契約では、次の事項を定める必要があります。
- 被担保債権の範囲
- 極度額
- 債務者
元本確定期日は、必ず定めなければならない事項ではありません。定める場合は、設定契約から5年以内の日にする必要があります。
元本確定前と元本確定後の違い
元本確定とは、根抵当権が担保する元本を確定することです。元本確定前は、定められた範囲の取引から発生する債権が担保の対象となります。元本確定前に被担保債権が存在しなくても、根抵当権は消滅しません。
元本確定後は、元本確定期日に存在する債権が担保の対象となります。また、元本確定前の根抵当権には付従性がないため、元本確定前に被担保債権を譲り受けても、譲受人は根抵当権を行使できません。元本確定前に債務の引受けがあった場合も、根抵当権者は引受人の債務について根抵当権を行使できません。
元本確定期日を定めなかった場合
元本確定期日を定めていなくても、根抵当権者または設定者から元本の確定を請求できます。また、債務者または設定者が破産手続開始決定を受けた場合など、法律上定められた事由によって元本が確定することもあります。
根抵当権の内容の変更
根抵当権の内容は変更できますが、元本確定の前後によって変更できる事項が異なります。
| 変更事項 | 変更できる時期 | 利害関係人の承諾 |
|---|---|---|
| 被担保債権の範囲 | 元本確定前に限る | 不要 |
| 債務者 | 元本確定前に限る | 不要 |
| 元本確定期日 | 元本確定前に限る | 不要 |
| 極度額 | 元本確定後も可能 | 必要 |
被担保債権の範囲や債務者を変更した場合、元本確定前に変更の登記をしなければ、変更をしなかったものとみなされます。元本確定期日を変更する場合も、変更前の期日より前に変更の登記をしなければ、変更前の期日に元本が確定します。
根抵当権の処分
元本確定前は、根抵当権設定者の承諾を得て、根抵当権を譲り渡すことができます。また、根抵当権を2個に分割して一方を譲り渡す分割譲渡や、根抵当権を分割せずに譲受人と共有する一部譲渡もできます。
根抵当権の極度額の減額請求
元本確定後、根抵当権設定者は、現に存在する債務の額に、以後2年間に生ずべき利息などの定期金および債務不履行による損害賠償の額を加えた額まで、極度額を減額するよう請求できます。
根抵当権の消滅請求
元本確定後に現に存在する債務の額が極度額を超えるときは、他人の債務を担保するために根抵当権を設定した者や、一定の権利を取得した第三者は、極度額に相当する金額を払い渡し、または供託して、根抵当権の消滅請求をすることができます。この払渡しまたは供託は、弁済の効力を有します。
