先取特権の対抗要件とは?登記の要否と抵当権との優先関係を解説

先取特権とは、法律で定められた一定の債権について、債務者の財産から他の債権者に先立って弁済を受けられる担保物権です(民法303条)。もっとも、先取特権が成立することと、第三者にその権利を主張できることは別です。ここでは、先取特権の対抗要件である登記の要否と、抵当権との優先関係を説明します。

先取特権の対抗要件とは

先取特権には一般の先取特権と特別の先取特権がある

先取特権には、債務者の財産全体を対象とする一般の先取特権と、特定の財産を対象とする特別の先取特権があります。

  • 一般の先取特権:共益費用、雇用関係、子の監護費用、葬式費用、日用品の供給など
  • 動産の先取特権:特定の動産を対象とするもの
  • 不動産の先取特権:不動産の保存、工事、売買を原因とするもの

対抗要件とは、成立した権利を、債務者以外の第三者にも主張するために必要な要件をいいます。

先取特権は契約や登記がなくても成立する

先取特権は、当事者間の契約によって設定する担保ではなく、法律上の要件を満たす債権が発生した場合に、原則として当然に成立します。ただし、第三者との優先関係では、登記などの対抗要件が問題になります。

先取特権に登記は必要?種類ごとの対抗要件

一般の先取特権は登記がなくても対抗できる場合がある

一般の先取特権は、不動産について登記できます。しかし、登記がなくても、特別担保を持たない一般債権者や、登記を備えていない第三者には対抗できます(民法336条)。

ただし、一般の先取特権者は、最初から不動産を優先的に換価できるわけではありません。まず不動産以外の財産から弁済を受け、それでも不足する場合に限って、不動産から弁済を受けます(民法335条)。

不動産の先取特権は、原則として登記が重要になる

不動産の先取特権には、次の3種類があります。

  • 不動産保存の先取特権
  • 不動産工事の先取特権
  • 不動産売買の先取特権

不動産の先取特権では、種類により、登記の有無や登記の前後が優先関係を左右します。そのため、不動産の先取特権を第三者に主張する場面では、登記が重要です。

動産の先取特権は、目的動産の引渡しに注意する

動産の先取特権では、不動産のような登記ではなく、目的となる動産が第三者に引き渡されていないかが重要です。債務者が目的動産を第三者へ引き渡した後は、その動産について先取特権を行使できません(民法333条)。占有改定による引渡しも含まれます。

先取特権と抵当権の優先関係

不動産保存・不動産工事の先取特権は、登記により先順位抵当権にも優先する

登記をした不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権は、同じ不動産について設定された先順位の抵当権や不動産質権にも優先します(民法339条)。つまり、抵当権の登記が先であっても、これらの先取特権について登記がされていれば、先取特権者が優先して弁済を受けます。

一方、不動産売買の先取特権と抵当権や不動産質権との順位は、原則として登記の前後で決まります。したがって、先取特権の種類によって結論が異なる点に注意が必要です。