お金を返すとき、領収書や契約書を返してもらいたいと考えることがあります。しかし、領収書の交付請求と契約書の返還請求は、法律上同じ扱いではありません。特に、領収書の交付は弁済と同時履行の関係にある一方、契約書の返還は同時履行の関係にない点が重要です。
弁済・領収書・契約書の返還請求は何が違うのか
弁済とは債務を契約どおりに履行すること
弁済とは、金銭の支払い、物の引渡しなど、契約内容に従って債務を履行することです。債務者が弁済をすると、その債権は消滅します(民法473条)。ここでは、主に金銭を返済して債務を消滅させる場面を扱います。
領収書は弁済を受けたことを示す「受取証書」
領収書は、弁済を受領したことを示す受取証書にあたります。弁済者は、弁済と引換えに、受取証書の交付を請求できます(民法486条1項)。相手が領収書を交付しない場合、弁済者は弁済を拒むことができます。
また、領収書の代わりに、その内容を記録した電磁的記録の提供を求めることもできます。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課す場合は請求できません(同条2項)。
契約書は債権に関する証書であれば返還を請求できる
契約書などが、弁済する債権に関する証書にあたる場合、弁済者は債務を全部弁済したときに、その証書の返還を請求できます(民法487条)。
領収書の交付は弁済と同時履行の関係にある
領収書を交付しないときは弁済を拒絶できる
領収書の交付と支払いは、法律上、同時履行の関係にあります。つまり、弁済者は領収書と引換えに支払うことができ、債権者が領収書を渡さない限り、弁済を拒絶できます。
契約書の返還は領収書と異なり同時履行ではない
これに対して、契約書などの返還請求は、領収書の交付請求とは異なり、弁済との同時履行の関係にはないとするのが通説です。そのため、契約書を返還しないことだけを理由に、支払いそのものを拒むことはできません。返還を請求する権利があることと、弁済を拒絶できることは別の問題です。
| 項目 | 領収書・受取証書 | 契約書などの債権証書 |
|---|---|---|
| 請求時期 | 弁済と引換え | 全部の弁済をしたとき |
| 同時履行 | ある | ないのが通説 |
| 応じない場合 | 弁済を拒絶できる | 返還請求はできるが、弁済を拒絶できるわけではない |
弁済時に領収書や契約書の返還を求めるときの確認事項
領収書は弁済と引換えに請求する
支払う際は、領収書などの受取証書を交付するよう求めましょう。交付されない場合は、同時履行を理由に弁済を拒絶できます。電磁的記録を求める場合は、相手に不相当な負担をかけないことが必要です。
契約書の返還請求は「全部の弁済」が前提
契約書の返還を求めるときは、その書面が弁済対象の債権に関する証書か、債務を全額弁済したかを確認します。ただし、返還請求権がある場合でも、契約書が返されないことだけで支払いを拒めるわけではありません。
