第三者のためにする契約とは、契約当事者の一方(諾約者)が第三者に対してある給付をすることを相手方(要約者)に約し、第三者(受益者)に直接権利を取得させる契約です(民法537条1項)。
この契約では、当事者と第三者の関係を次の3者に分けて考えると理解しやすくなります。
- 要約者:諾約者に対して、第三者への給付を約させる相手方
- 諾約者:第三者に給付することを約束する人
- 受益者:契約によって直接権利を取得する第三者
第三者のためにする契約とは
第三者に直接権利を取得させる契約
要約者と諾約者が契約を結び、諾約者が受益者に対して給付をする仕組みです。受益者が取得する権利は、代金請求権などの債権に限らず、所有権などの物権でも構いません(大判昭5・10・2)。
例えば、Aが所有する甲土地をBに売却する売買契約において、Bが代金をCに支払うと合意するケースです。この場合、Aが要約者、Bが諾約者、Cが受益者となります。
第三者のためにする契約は、要約者が第三者の代理人になるものではありません。要約者と諾約者が、それぞれ自分の名において契約をする点が重要です。
第三者は契約時に存在・特定していなくてもよい
契約を結んだ時点で、受益者が現に存在していなくても、また誰であるか特定されていなくても、契約の効力は妨げられません(民法537条2項)。受益者は個人か法人かを問わず、出生前の胎児を受益者とする契約も有効です(最判昭37・6・26)。
第三者のためにする契約の要件
要約者と諾約者の間で契約を結ぶこと
要約者と諾約者の間で、諾約者が第三者に給付する内容の契約を結びます。第三者のためにする契約は、当事者が自己の名において行う契約です。
第三者が直接権利を取得する内容であること
第三者に取得させる権利は、債権に限らず、所有権などの物権でも構いません。
受益者が受益の意思を表示すること
受益者の権利は、受益者が諾約者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生します(民法537条3項)。受益の意思表示をするまでは、当事者は第三者が取得すべき権利を変更し、または消滅させることができます(民法538条1項反対解釈)。
第三者のためにする契約の効果
権利発生後は変更・消滅させられない
受益者が受益の意思を表示して権利を取得した後は、当事者はその権利を変更し、または消滅させることができません(民法538条1項)。
受益者は諾約者に直接履行を請求できる
受益者の権利が発生した後は、受益者が諾約者に対して直接履行を請求できます。諾約者は受益者に直接履行する義務を負いますが、要約者に対する抗弁をもって、受益者に対抗することができます(民法539条)。
諾約者が履行しない場合の解除
受益者の権利が発生した後に諾約者が受益者に対する債務を履行しない場合、要約者が契約を解除するには、受益者の承諾が必要です(民法538条2項)。これは、受益者を保護するための制限です。
第三者のためにする契約のポイント
- 要約者と諾約者の契約により、受益者が直接権利を取得する
- 受益者は契約時に存在・特定していなくてもよい
- 受益者が諾約者に受益の意思を表示すると、権利が発生する
- 権利発生後は、受益者が諾約者に直接履行を請求できる
- 権利発生後は、権利の変更・消滅や契約解除に制限がある
