売主の義務とは?売買契約における財産権移転義務を解説

売買契約における売主の義務とは

売主は財産権を買主に移転する義務を負う

売買契約は、売主がある財産権を買主に移転することを約し、買主がその代金を支払うことを約することによって効力を生じる、諾成・双務・有償の契約です(民法555条)。したがって、売主の中心的な義務は、契約の内容に適合する財産権を買主へ移転することです。

財産権移転義務の具体的な内容

契約内容に適合する目的物を引き渡す

売主は、目的物について、契約で定めた種類・品質・数量に適合するものを買主に引き渡さなければなりません(民法555条、562条)。これに適合しない目的物を引き渡した場合、契約不適合となります。

登記・登録などの対抗要件を備えさせる

売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務も負います(民法560条)。不動産では、所有権移転登記が代表例です。

他人の権利を売買した場合の売主の義務

他人物売買も有効だが、売主は権利を取得して移転しなければならない

売買契約では、他人の権利を売買の目的とすることも可能です。他人の権利を目的とした売買契約も有効ですが、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負います(民法561条)。

権利の全部が他人に属する場合だけでなく、権利の一部が他人に属する場合も同様です。

権利を移転できない場合の買主の対応

権利の全部が他人に属し、売主がその権利を取得して買主に移転できない場合、売主は債務不履行責任を負います。買主は契約を解除でき、売主に帰責事由があるときは、損害賠償を請求できます(民法415条、541条、542条1項1号)。

一方、権利の一部が他人に属するなど、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しない場合は、権利の契約不適合として、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除の対象となります(民法562条、563条、564条、565条)。

売主が財産権移転義務を果たさない場合

売主が契約どおりの財産権や目的物を移転しない場合、契約不適合の内容に応じて、買主は次の請求などをすることができます。

  • 修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しなどを求める追完請求
  • 追完されない場合の代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約の解除

ただし、契約不適合が買主の帰責事由によるものであるときは、追完請求や代金減額請求はできません(民法562条2項、563条3項)。また、種類・品質に関する不適合では、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、原則として追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができません(民法566条)。ただし、売主が引渡し時に不適合を知っていた、または重大な過失によって知らなかった場合は、この期間制限は適用されません。