不法な原因のためにお金や物を渡した場合、契約が無効であっても、原則として返還を求められないことがあります。これが民法708条の不法原因給付です。
この記事では、不法原因給付とは何か、返還請求できない要件、例外的に返還請求できるケースを解説します。
不法原因給付とは?返還請求が制限される理由
不法原因給付の意味
不法原因給付とは、公序良俗に反するなど、法律上保護すべきでない原因のために、金銭・物・不動産などを相手に渡すことです。たとえば、賭博の賭け金として金銭を支払うケースが挙げられます。
このような契約は無効であるため、通常なら「法律上の原因がない利益」として、不当利得返還請求をする余地があります。しかし、自ら公序良俗に反する行為をした人の返還請求を認めると、その人を法的に保護する結果になります。そこで民法708条は、原則として給付した物の返還を認めていません。
「給付」に含まれるもの
給付には、代金や賭け金などの金銭の支払い、物の引渡し、不動産の引渡しや登記の移転が含まれます。未登記の不動産は、引渡しによって給付に当たります。一方、既登記の不動産では、登記の移転が必要とされています。
不法原因給付に当たると返還請求できない場合
返還請求できないための基本的な考え方
不法原因給付が成立するには、不法な原因のために給付したことが必要です。不法な原因とは、公序良俗に反するなど、法的に保護するのが適切でない原因を指します。
給付者自身にも不法性がある場合、原則として、不当利得による返還請求はできません。また、給付した人が所有者であっても、所有権を理由とする返還請求まで認められないことがあります。
返還請求できない場合の効果
いったん不法原因給付が成立すると、金銭や物の返還を求められません。給付後に不動産の保存登記などをしたとしても、すでに引渡しによる給付が成立していれば、返還請求できません。
不法原因給付でも返還請求できる例外
不法な原因が受益者側にだけある場合
民法708条ただし書は、不法な原因が受益者についてのみ存在するとき、給付者による返還請求を認めています。つまり、給付した側には不法な原因がなく、受け取った側だけに不法な原因がある場合です。
給付者の不法性が受益者より著しく軽い場合
給付者側にも一定の不法性があっても、受益者側の不法性が大きく、給付者側の不法性が極めて軽微であるときは、民法708条が適用されないことがあります。この場合、不当利得として返還を求められる可能性があります。したがって、給付者に少しでも不法性があれば必ず請求できない、というわけではありません。
給付後の返還合意がある場合
不法原因給付に当たる場合でも、給付後に当事者間で返還する合意をしたときは、その返還特約が有効とされます。民法708条により当然に返還請求できないことと、後から返還を約束した合意に基づいて請求できることは、分けて考える必要があります。
まとめ|不法原因給付は「不法な原因」と「誰に不法性があるか」がポイント
- 不法原因給付とは、不法な原因のために金銭や物などを渡すこと
- 原則として、不当利得や所有権を理由とする返還請求はできない
- 不法な原因が受益者だけにある場合は返還請求できる
- 給付者側の不法性が極めて軽い場合や、給付後に返還合意をした場合も、返還が認められる可能性がある
実際の判断では、給付の内容や、当事者双方の不法性の内容・程度が重要になります。
