占有の訴えと本権の訴えの違いとは?所有権との関係を解説

物を奪われたり、無断で使われたりしたときは、占有していた事実を守る方法と、所有権などの権利を根拠に返還を求める方法があります。前者が占有の訴え、後者が本権の訴えです。両者は、裁判で何を保護し、何を判断するかが異なります。

占有の訴えとは

占有の訴えとは、所有者であるかどうかを問わず、物を事実上支配していた状態を守るための訴えです。賃借人のように、所有者ではなくても直接物を持っている人は占有者に含まれます。裁判では、所有権の有無よりも、占有が妨害されたか、奪われたかが中心となります。

占有の訴えの3種類

  • 占有保持の訴え:現に占有を妨害されている場合に、妨害の停止や損害賠償を求めます。妨害中、または妨害がなくなってから1年以内に提起します。工事による妨害は、工事着手から1年以内で、かつ工事完成前に限られます。
  • 占有保全の訴え:まだ妨害はないものの、その危険がある場合に、妨害の予防や損害賠償の担保を求めます。妨害の危険がある間に提起します。
  • 占有回収の訴え:窃取や強盗などによって占有を奪われた場合に、物の返還や損害賠償を求めます。占有を奪われた時から1年以内に提起する必要があります。

ただし、詐欺によって自分で物を渡した場合や、賃借人が返還を拒んでいる場合は、原則として占有回収の訴えの対象になりません。また、占有回収の訴えは悪意の特定承継人には行使できますが、善意の特定承継人には行使できません。

本権の訴えとは

本権の訴えは、所有権などの実体的な権利を根拠として、その権利の実現を求める訴えです。代表例は、所有権に基づいて無権限で占有する者に物の返還を請求する訴えです。占有の事実ではなく、誰が所有者か、返還を求める権利があるかが判断されます。

占有の訴えと本権の訴えの違い・関係

項目 占有の訴え 本権の訴え
根拠 占有していた事実 所有権などの本権
主な判断対象 妨害・奪取の有無 権利の有無
代表例 占有回収の訴え 所有権に基づく返還請求

占有の訴えでは、本権を理由にして占有侵害を正当化することはできません。たとえば、Aが所有するカメラをBに貸していたところ、Aが無断でBの自宅から持ち出した場合、Bは所有者でなくても占有回収の訴えを提起できます。Aが所有者であることだけで、無断の持ち出しが直ちに正当になるわけではありません。

一方、Aがカメラの返還を求める場合は、所有権に基づく本権の訴えによります。占有の訴えと本権の訴えは互いに妨げないため、要件を満たす限り、双方またはいずれか一方を提起できます。一方の訴えで敗訴しても、他方の訴えを提起できます。ただし、占有の訴えで所有権を抗弁として主張して正当化することはできず、所有権に基づく反訴を提起することは認められます。