行政機関が行う「同意」や、住民票への「記載」は、行政庁の行為であるため、取消訴訟の対象になるようにも思えます。しかし、行政庁が行った行為であれば、すべてに処分性が認められるわけではありません。
この記事では、行政機関の同意と住民票の記載について、判例をもとに処分性の有無を解説します。
処分性とは
処分性とは、行政庁の行為が取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使」に当たるかどうかを判断する要件です。
判例上、処分とは、国や地方公共団体が法律に基づいて行う行為のうち、その行為によって、国民の権利義務を直接形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいいます。
したがって、処分性を判断する際は、主に次の点を確認します。
- 法律に基づく行為か
- 国民に対して行われる行為か
- 国民に直接行われる行為か
- 国民の権利義務を形成・確定する行為か
行政機関の内部的な行為や、法的効果を直接生じさせない事実上の行為は、原則として処分性が否定されます。ただし、名称が「同意」や「記載」であっても、実質的に直接の法的効果を生じさせる場合は、個別に判断されます。
行政機関の「同意」に処分性はあるのか
開発行為に関する不同意
都市計画法に基づいて土地の形質変更を行う際には開発行為の許可が必要となり、その許可申請にあたり、開発行為に関係がある公共施設の管理者である行政機関などの同意を得なければならない場合があります。
もっとも、公共施設の管理者が開発行為に同意しなかったとしても、その不同意自体が開発行為を禁止・制限する効果を持つわけではありません。
最高裁判所は、開発行為に関係する公共施設の管理者がした不同意について、処分性を否定しました(最判平成7年3月23日)。同意を求める手続や基準、不同意に対する不服申立ての規定がないことなども、その理由とされています。
行政機関内部の同意
行政機関同士の手続として行われる同意は、国民に直接向けられたものではなく、行政機関の内部行為にとどまります。
消防法上の建築許可に関して、消防長が知事に対して行った同意について、最高裁判所は処分性を否定しました(最判昭和34年1月29日)。行政機関の内部行為であり、直接国民の権利義務に法的な効果を生じさせる性質のものではないためです。
このように、行政機関の同意については、国民の権利義務に直接法的な効果を生じさせるものかどうかが、処分性を判断するポイントになります。
住民票への続柄の記載に処分性はあるのか
市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為についても、最高裁判所は処分性を否定しています(最判平成11年1月21日)。
住民票への続柄の記載によって、国民の権利義務が直接形成されたり、その範囲が確定されたりする法的効果が生じるとはいえないためです。
まとめ
行政機関の同意や住民票への記載は、行政庁の行為であっても、今回紹介した判例では処分性が否定されています。
- 開発行為に関する公共施設管理者の不同意は、開発行為を直接禁止・制限する効果がないため、処分性が否定された
- 消防長から知事への同意は、行政機関内部の行為であるため、処分性が否定された
- 住民票への世帯主との続柄の記載は、国民の権利義務に直接の法的効果を及ぼさないため、処分性が否定された
ただし、判断の基準は行為の名称ではありません。法律上、国民の権利義務を直接形成・確定する効果があるかを、行為の実質に即して判断します。
