原告適格が認められなかった判例一覧|取消訴訟を提起できないケース

原告適格が認められないのはどのような場合か

原告適格とは

原告適格とは、行政庁の処分や裁決の取消しを求める訴訟を提起できる資格です。行政事件訴訟法9条1項は、取消しを求めることについて「法律上の利益を有する者」に限り、取消訴訟を提起できると定めています。

そのため、処分によって事実上の不利益を受けたり、処分に関心や利害関係があったりするだけでは、原告適格が認められないことがあります。

「法律上の利益」と反射的利益の区別

「法律上の利益」とは、行政法規が個人の利益を保護する目的で行政権の行使を制限していることにより保障される利益をいいます。一方、公益が実現した結果として、たまたま特定の人が受ける利益は反射的利益とされ、法律上保護された利益とは区別されます。

主婦連ジュース不当表示事件では、消費者が商品表示の認可を争う原告適格が問題となり、消費者としての利益は法律上保護された利益には当たらないと判断されました。

第三者の原告適格を判断する基準

処分の相手方ではない第三者については、行政事件訴訟法9条2項に基づき、単に法令の文言だけでなく、次の事情を考慮して判断します。

  • 処分の根拠となる法令の趣旨・目的
  • 目的を共通にする関係法令の趣旨・目的
  • 処分によって害される利益の内容・性質
  • 利益が害される態様・程度

つまり、処分による不利益があるかだけでなく、その利益が法令によって個人ごとの利益として保護されているかが重要です。

原告適格が認められなかった判例一覧

判例 争われた処分 原告適格が否定された者
質屋営業許可事件(最判昭34・8・18) 質屋の新規営業許可 既存の質屋営業者
町名変更決定事件(最判昭48・1・19) 町名の変更決定 影響を受ける住民
主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53・3・14) ジュースの商品表示の認可 消費者
農地転用許可事件(最判昭58・9・6) 農地転用許可 隣接農地の所有者
公有水面埋立免許事件(最判昭60・12・17) 公有水面の埋立免許 漁業権を有する者
教職員転任処分事件(最判昭61・10・23) 同一市内の他の中学校への転任 転任を受けた教職員
特急料金認可事件(最判平元・4・13) 鉄道の特急料金認可 鉄道周辺の住民
史跡指定解除事件(最判平元・6・20) 史跡の指定解除 学術研究者
パチンコ店営業許可事件(最判平10・12・17) 住宅地での風俗営業許可 地域住民
墓地経営許可事件(最判平12・3・17) 墓地の経営許可 当該墓地から300mに満たない地域に敷地がある住宅に居住する者
病院開設許可事件(最判平19・10・19) 病院開設許可 付近の医師およびその医師らが加入する医療法人等
場外車券売場設置許可事件(最判平21・10・15) 場外車券売場施設の設置許可 周辺住民・事業者

病院開設許可事件では、付近の医師およびその医師らが加入する医療法人等の原告適格は否定されました。ただし、当該施設の周辺の医療施設の開設者については原告適格が認められています。

また、墓地経営許可事件では原告適格が否定された一方、納骨堂の経営許可を争った事件では、所在地からおおむね300m以内の人家に居住する者に原告適格が認められました。距離や周辺住民という事情だけで結論が決まるわけではありません。

判例を確認するときのポイント

既存業者、周辺住民、消費者、研究者など、処分による影響を受ける者でも、原告適格が否定されることがあります。判断の中心は、単なる不利益や利害関係ではなく、根拠法令がその利益を個別的利益として保護しているかどうかです。

原告適格が認められなければ、その者は当該処分の取消しを求める取消訴訟を提起できません。