「時効が完成する前に、時効を使わないと約束できるのか」「時効完成後に放棄すると、どのような効果があるのか」「1人が放棄した場合、他の関係者も時効を使えなくなるのか」と疑問に感じる方もいるでしょう。
時効利益の放棄は、時効によって受けられる利益を自分から受けない意思を示すことです。この記事では、時効の完成前後における違いと、放棄の相対効について解説します。
時効利益の放棄とは
時効の利益を受けない意思を示すこと
消滅時効では、時効を援用することで、債務を免れるなどの利益を受けられる場合があります。時効利益の放棄とは、このような利益を自ら受けないと意思表示することです。
なお、時効は一定期間が経過しただけで、直ちに時効の利益が確定するわけではありません。時効の利益を受けるには、利益を受ける者が「時効を援用する」と意思を示す必要があります。放棄は、これとは反対に、時効の利益を受けない意思を示すものです。
時効利益は完成前と完成後で扱いが異なる
完成前の放棄はできない
民法146条により、時効が完成する前に、時効利益をあらかじめ放棄することはできません。
たとえば、債務者が「将来時効が完成しても、時効を主張しない」と約束したとしても、その約束だけで時効利益を放棄したことにはなりません。完成前の放棄を認めると、債権者が債務者に対し、あらかじめ放棄を迫るおそれがあるためです。
したがって、時効完成前の事前の約束と、時効完成後の放棄は区別しなければなりません。
完成後の放棄はできる
時効完成後であれば、時効利益を放棄することは自由です。時効の利益を受けるかどうかは、利益を受ける者の意思に委ねられています。
時効利益の放棄の相対効とは
放棄の効果は放棄した本人に限られる
時効利益の放棄は、放棄した者についてのみ効力を生じます。これを「相対効」といいます。
たとえば、主たる債務者が時効利益を放棄しても、保証人に対しては効力を生じません。そのため、主たる債務者が時効利益を放棄した場合でも、保証人は時効を援用することができます。
相対効とする理由
時効の利益を受けるかどうかは、基本的にその利益を受ける者の意思が尊重されます。そのため、1人が放棄しただけで、別の者の時効利益まで失わせることはありません。
まとめ
- 時効利益の放棄とは、時効による利益を受けない意思を示すこと
- 時効完成前は、時効利益をあらかじめ放棄できない
- 時効完成後は、時効利益を放棄できる
- 放棄の効果は本人に限られ、他の関係者には当然には及ばない
「完成前は放棄できない」「完成後は放棄できる」「放棄の効果は本人に限られる」という3点を押さえておきましょう。
