土地や建物の所有者が分かっていても、放置などによって適切に管理されず、近隣の権利や利益に悪影響を及ぼすことがあります。このような場合に利用できるのが、管理不全土地・建物管理命令です。
管理不全土地・建物管理命令とは
管理不全土地・建物管理命令とは、所有者による土地や建物の管理が不適切で、その結果、他人の権利または法律上保護される利益が侵害されている、または侵害されるおそれがある場合に、利害関係人の請求により、裁判所が管理人による管理を命じる制度です。裁判所が必要があると認めることも要件となります。
所有者が不明であることは要件ではありません。所有者が判明していても、管理の不適切さによって他人の権利や法律上保護される利益が侵害される、またはそのおそれがあり、管理人による対応が必要だと裁判所が認めれば、利害関係人の請求により命令が出される可能性があります。命令が出ると、管理不全土地管理人または管理不全建物管理人が選任され、対象となる土地・建物の保存、利用、改良など、管理に必要な行為を行います。
所有者不明土地・建物管理命令との違い
| 項目 | 管理不全土地・建物管理命令 | 所有者不明土地・建物管理命令 |
|---|---|---|
| 対象 | 所有者は判明しているが、管理が不適切 | 所有者またはその所在が分からない |
| 制度の目的 | 不適切な管理による権利・利益の侵害への対応 | 所有者不明の土地・建物を管理すること |
| 管理・処分権 | 管理人に専属しない | 管理人に専属する |
所有者不明土地・建物管理命令では、管理人が対象となる土地・建物などを管理・処分する権利を持ち、所有者側の管理・処分権は制限されます。一方、管理不全土地・建物管理命令では所有者が明らかなため、管理人の権限は専属しません。所有者自身も、土地・建物の管理や処分を行うことができます。
裁判所の許可と所有者の同意
いずれの制度でも、保存行為や、対象物の性質を変えない範囲での利用・改良を超える行為には、裁判所の許可が必要です。
ただし、管理不全土地・建物管理命令では、裁判所の許可に加えて所有者の同意も必要です。所有者不明土地・建物管理命令では、所有者が不明であるため、所有者の同意までは求められません。また、許可がないことを第三者に主張できる範囲にも違いがあり、所有者不明の場合は善意の第三者に対抗できず、管理不全の場合は善意・無過失の第三者に対抗できません。
管理不全土地・建物管理命令のポイント
この制度は、所有者不明の土地を対象とする制度ではありません。所有者が分かっていても、管理の不適切さによって他人の権利や法律上保護される利益が侵害される、またはそのおそれがある場合に、利害関係人の請求により利用される点が重要です。
