種類債権が特定するとどうなる?善管注意義務と所有権移転を解説

種類債権の「特定」とは、種類や数量だけで決まっていた給付の対象物が、具体的な物に絞り込まれることです。特定されると、給付の目的物が確定し、債務者には善管注意義務が生じます。また、不特定物(種類物)の売買では、特段の事情がない限り、特定時に買主へ所有権が移転します。

種類債権の「特定」とは?特定前との違い

種類債権とは

種類債権とは、ビールや米のように同じ種類の物が多数ある中で、種類や数量を指定して給付を求める債権です。たとえば、ビール1ダースや米100キログラムを給付する債権が該当します。種類債権は、給付の目的物が特定されていないため、「不特定物債権」ともいわれます。

債権の目的物を種類のみで指定し、法律行為の性質または当事者の意思によって品質を定められない場合、債務者は原則として「中等の品質」の物を給付します(民法401条1項)。

特定すると何が変わるのか

特定後は、給付すべき具体的な物が決まり、その物が債権の目的物になります(民法401条2項)。特定前に目的物が滅失した場合、債務者は原則として同じ種類の物を調達して債権者に提供する義務を負います。

なお、「この倉庫にあるビール1ダース」のように対象範囲が限定された制限種類債権では、その範囲内の物がすべて失われると履行不能になります。

種類債権が特定する2つのタイミング

債務者が給付に必要な行為を完了したとき

種類債権は、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したときに特定します(民法401条2項前段)。特定の時期は、債務の履行方法によって異なります。

  • 持参債務:債務者が目的物を取り分け、債権者の住所に持参し、現実に提供したときに特定します(民法484条1項後段、493条本文参照)。
  • 取立債務:債務者が目的物を取り分け、債権者に引き渡すことができる状態にしたうえで、債権者に通知したときに特定します。
  • 送付債務:第三地が履行場所として指定されているときは、履行地に目的物を送付し、そこで提供した時点で特定します。債務者が債権者の依頼により、好意で第三地に送付する場合は、発送した時点で特定します。

債権者の同意を得て給付物を指定したとき

債権者の同意を得て、給付すべき物を指定したときも、種類債権は特定します(民法401条2項後段)。

種類債権が特定した後に生じる効果

特定された物が債権の目的物になる

種類債権が特定すると、以後は特定した物が債権の目的物になります(民法401条2項)。

債務者に善管注意義務が生じる

特定物の引渡しを目的とする債権では、債務者は引渡しまで、契約その他の債権の発生原因および取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければなりません(民法400条)。これを善良な管理者の注意義務、つまり善管注意義務といいます。

種類債権でも、特定後は具体的な物が債権の目的物になるため、引渡しまで善管注意義務を負います。なお、「自己の財産に対するのと同一の注意義務」など、善管注意義務より軽い注意義務は例外です。民法上は、善管注意義務が原則とされています。

種類物の売買では原則として所有権が移転する

不特定物(種類物)の売買では、特段の事情がない限り、目的物が特定した時点で買主に所有権が移転します。特定と所有権移転は関連しますが、所有権移転のルールは種類物の売買におけるものです。

まとめ

種類債権は、債務者が給付に必要な行為を完了したとき、または債権者の同意を得て給付物を指定したときに特定します。特定後は、その物が債権の目的物となり、引渡しまで債務者に善管注意義務が生じます。また、不特定物(種類物)の売買では、特段の事情がない限り、特定時に買主へ所有権が移転します。