債権者代位権の転用とは?登記請求や妨害排除請求の具体例を解説

債権者代位権は、通常、債務者が第三者に対して持つ権利を行使しない場合に、債務者の一般財産を保全して金銭債権を回収しやすくする制度です。

これに対し、金銭債権以外の債権である特定債権を実現・保全するために代位することがあります。これを「債権者代位権の転用」といいます。

債権者代位権の転用とは

通常の債権者代位権との違い

通常の債権者代位権は、債務者の一般財産を保全することが目的です。そのため、債務者が無資力であること、つまり財産が十分でなく、債権者が完全な弁済を受けられないことが要件となります。

一方、債権者代位権の転用では、債務者の一般財産を維持するのではなく、債権者が債務者に対して持つ特定債権を実現・保全します。したがって、原則として債務者の無資力は必要ありません。債権者は債務者の代理人になるのではなく、自分の名において債務者の権利を行使します。ただし、一身専属権など、代位行使できない権利は対象となりません。

債権者代位権の転用が認められる登記請求の例

不動産が順番に売買された場合

不動産がAからB、BからCへ売買されたものの、登記名義がAのままだとします。この場合、CはBに対して登記請求権を持ち、BはAに対して登記請求権を持ちます。

BがAに請求しないとき、Cは、BのAに対する登記請求権を代位行使できます(民法423条の7前段)。ただし、債権者代位権を行使して、Cへ直接登記を移転するよう請求することはできません。

第三者による無効な登記がされた場合

不動産がAからB、BからCへ売買された後、登記未了の間にDが原因証書などを偽造して、AからDへの無効な登記をしたとします。

この場合、Cは、BがAに対して持つ無効登記抹消請求権を代位行使できることがあります。これは、BのAに対する代位権をCがさらに代位行使する形で、「代位権の代位行使」と呼ばれる例です。

債権者代位権の転用が認められる妨害排除請求の例

土地の賃借人が不法占拠者に明渡しを求める場合

土地を賃借している者がいる一方で、第三者がその土地を不法に占拠しているとします。

土地所有者は、不法占拠者に対する土地の明渡しを請求できます。土地の賃借人は、賃貸人である土地所有者に代位して、不法占拠者に土地の明渡しを請求することができます(大判昭4・12・16)。

抵当権者が抵当不動産の不法占拠を排除する場合

抵当不動産を第三者が不法に占拠し、その結果、不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難になっているとします。

このような場合、抵当権者は、抵当不動産の所有者が不法占拠者に対して持つ妨害排除請求権を代位行使することができます(最大判平11・11・24)。

債権者代位権の転用を使うときの注意点

債権者代位権の転用は、債務者の一般財産を増やして金銭債権を回収するためではなく、債権者が債務者に対して持つ特定債権を実現・保全するためのものです。そのため、原則として債務者の無資力は必要ありません。ただし、債務者が実際に持つ権利を代位する必要があり、一身専属権などは対象となりません。