不法行為で被害者が死亡した場合の損害賠償請求と相続を解説

不法行為によって被害者が死亡した場合、加害者に損害賠償を請求できる可能性があります。請求には、被害者本人が持っていた権利を相続して行うものと、遺族が自分自身の権利として行うものがあります。

不法行為で被害者が死亡した場合、損害賠償請求が認められる条件

不法行為が成立する5つの要件

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を与える行為です。原則として、次の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 損害が発生していること
  2. 加害者に故意または過失があること
  3. 加害者に責任能力があること
  4. 行為が違法であること
  5. 加害行為と損害との間に因果関係があること

たとえば、単に死亡という結果が生じただけでは、直ちに加害者の責任が認められるわけではありません。故意・過失のある違法な行為によって死亡したことが必要です。

死亡との因果関係が必要

加害者の行為と被害者の死亡との間に、法律上認められる因果関係が必要です。つまり、その行為から通常予見できる相当の損害として死亡が生じたといえるかが問題になります。因果関係が認められなければ、死亡を原因とする損害賠償請求は認められません。

生命侵害では財産以外の損害も賠償対象になる

生命を侵害された場合、財産的損害だけでなく、精神的苦痛に対する慰謝料も賠償の対象になります。

被害者本人の損害賠償請求権は相続できる

被害者が死亡しても請求権は消滅しない

被害者本人に生じた慰謝料請求権は、死亡したことだけを理由に消滅しません。相続の対象となるため、相続人がその権利を引き継ぎ、加害者に請求できます。

被害者が生前に請求していなくても相続できる

被害者が生前に加害者へ請求したり、請求する意思を示したりしていなくても、慰謝料請求権は相続の対象になります。たとえば、行為の直後に被害者が死亡し、請求の意思を伝える時間がなかった場合でも、相続人は被害者本人の請求権を行使できます。

相続人による請求と遺族自身の請求は別の権利

被害者本人の請求権を相続して請求する場合と、遺族が自分の精神的苦痛について請求する場合は、別の権利です。前者は被害者の権利の承継、後者は遺族固有の権利として整理します。

遺族自身も固有の慰謝料を請求できる

父母・配偶者・子は固有の慰謝料を請求できる

被害者の死亡によって精神的苦痛を受けた父母、配偶者、子は、民法711条に基づき、自分自身の慰謝料を請求できます。これは被害者から相続した請求権ではありません。

法律上定められた親族以外でも認められる場合がある

父母・配偶者・子に該当しない場合でも、被害者との関係がこれらの親族と実質的に同じといえ、死亡によって甚大な精神的苦痛を受けたときは、固有の慰謝料請求が認められる場合があります。

被害者が死亡しなかった場合でも慰謝料が認められることがある

被害者が死亡しなくても、身体を害された結果、その母が、被害者が死亡した場合にも比肩すべき精神的苦痛を受けたといえるときは、母自身の権利として慰謝料を請求できる場合があります。これは、被害者本人の請求権を相続する問題とは異なります。

不法行為による死亡と損害賠償請求の整理

  • 被害者本人の慰謝料請求権は相続の対象になる
  • 生前に請求の意思表示をしていなくても、相続人は請求できる
  • 父母・配偶者・子は、死亡による自分自身の精神的苦痛について請求できる
  • 法律上列挙された親族以外でも、実質的に同じ身分関係と甚大な精神的苦痛があれば請求できる場合がある