意見公募手続とは、行政機関が命令等を定める前に、その案や関連資料を公示し、広く一般から意見を募集する制度です。ただし、行政手続法39条4項に定められた場合には、手続を実施せずに命令等を定めることが認められています。
この場合でも、行政機関が何も公示しなくてよいわけではありません。原則として、意見公募手続を実施しなかったことと、その理由を公示する必要があります。
意見公募手続を実施しない場合も、公示が必要
実施しなくてもよい主な場合
意見公募手続を省略できるのは、行政機関の自由な判断によるのではなく、39条4項の要件に該当するときです。主な場合は次のとおりです。
- 公益上、緊急に命令等を定める必要があり、手続の実施が困難なとき
- 納付すべき金銭や予算による金銭の給付に関し、金額・率・算定方法などを定めるとき
- 法律上、委員会等の議を経て定める命令等で、政令上の要件に該当するとき
- 他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一のものを定めるとき
- 法令の適用・準用に必要な技術的な読替えを定めるとき
- 根拠法令の削除に伴い、当然に命令等を廃止するとき
- 他の法令の制定・改廃に伴う当然の規定整理など、軽微な変更をするとき
なお、法律上そもそも意見公募手続の対象外となる命令等と、39条4項により手続を実施しない命令等は別のものです。ここで説明する公示は、主に後者を対象とします。
公示する内容
39条4項のいずれかに該当して手続を実施せずに命令等を定めた場合、命令等制定機関は、原則として次の事項を公示します。
- 命令等の題名および趣旨
- 意見公募手続を実施しなかった旨およびその理由
したがって、単に「意見公募を実施しなかった」と知らせるだけでは足りません。どの命令等について、どの理由により手続を実施しなかったのかが分かるように示す必要があります。
公示の時期と方法
公示は、命令等の公布と同時期に行います。方法は、インターネット上のホームページへの掲載など、情報通信技術を利用する方法によるものとされています。
委員会等が意見公募手続に準じた手続を行う場合
行政機関による手続を省略できる仕組み
法律上、委員会等の議を経て命令等を定めることとされている場合があります。このとき、一定の要件を満たす委員会等が意見公募手続に準じた手続を実施すれば、命令等制定機関が同じ内容について改めて意見公募手続を行う必要はありません。
代替手続が認められる委員会等の要件
すべての委員会が対象となるわけではありません。次の要件を満たす必要があります。
- 法律の規定により、委員会等の議を経て命令等を定めることとされていること
- 相反する利害を持つ者の間の利害調整を目的とする命令等であること
- 関係する利害を有する者と公益をそれぞれ代表する委員により、法律または政令の規定に基づいて組織される委員会等であること
- 政令で定める命令等に該当すること
委員会で審議されたというだけで、当然に行政機関の意見公募手続が不要になるわけではありません。法律上の根拠、委員会の性質、政令上の対象などを確認する必要があります。
実施しない場合に確認すべきポイント
まず、39条4項各号のいずれかに該当するかを確認します。緊急性、金銭に関する事項、技術的な読替え、軽微な変更など、理由ごとに要件は異なります。
次に、委員会等による代替手続を利用する場合は、法律上その委員会の議を経る仕組みになっているか、意見公募手続に準じた手続が実施されたかを確認します。そして、手続を実施しなかった場合の公示には、命令等の題名・趣旨だけでなく、不実施の理由も記載することが重要です。
